マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
一年を72に分けた「七十二候」では「水始涸(みずはじめてかるる)」頃です。
昔は今の用に水道水ではなく井戸水が中心だったわけですが、この時期になると雨が少なくなり、川の水が少なくなって井戸水が涸れ始めるという説と、田んぼの水を抜いて干すという説があります。
しかし今年は雨が非常に多く、日照時間が少ないようで農作物の成長にも大きな影響が出ています。
それに度重なる台風は今まで経験したことが無いような大量の雨を降らせます。
先人が自然と共生し、のんびりと秋の風情を楽しんでいた頃とは地球は大きく異なってきたということでしょうか?
大量生産、大量消費で人は潤ったかもしれませんが、地球には大きな負荷がかかったのではないでしょうか・・・。
いずれにせよ稲刈りの時期ですが、春に「田の神」をお迎えして稲の苗を植え、八十八の手間暇をかけて稲が実り、それを収穫できるということは、この上ない喜びです。
だから神様に感謝を捧げるイベントを大々的に行わなければいけません。
これが「秋祭り」です。
祭りは日本全国津々浦々いつでもどこでもありますが、お祭りを行う理由は様々ですが、概ね「神様を祀り、神様に感謝し、災いを取り除いて頂く」意味合いが有ります。
ところで、祭りは意外に秋に集中しているように思いますが如何でしょうか?
その最大の理由は秋が「実りの季節」で「収穫の季節」だからでしょう。
そして収穫が終われば農作業が落ち着き、休みが取れやすいことと、なんと言っても収穫直後は懐が温かいという現実的な理由が大きいと思います。
だから秋まつりは結構盛大に行われます。
ちなみに春の祭りは厄払いの意味が多いようですが、秋の祭りは収穫への感謝の意味合いが強いようです。
しかし祭りの時期は必ずしも決まってはいません。
南北に細長い日本は南と北では気温はかなり異なり、田植えや稲刈りの時期もかなり異なるので、当然祭りの時期も違ってきます。
加えて、祭りの舞台となる神社の主旨により異なります。
島根県の出雲地方を除き、10月は本来「神無月」で神様が不在の月なのですが、今や祭りの最多月になっているような気がします。
地域の生活暦、因習、旧暦と新暦のずれなど複雑多様な要素が重なり、多くの変遷を経て定着したのかもしれませんね。
それでも実りの秋、収穫の祝いという感覚は各地で共有されており、日本の秋は収穫の秋であり、祭りの秋と言えるのではないでしょうか。
そしてその起源は非常に古く、人が作物を育てるようになってからだと言われています。
日本人が遠い祖先から受け継いできた、最も身近なところで存在する氏神様への感謝を表現する行事の歴史はかなり長いようですね。
これが次第に薄れ、外国の文化に押されるようでは非常にさびしい限りですね。
日本は豊かだけど幸せではない理由がこの辺にあるような気がしてなりません。
次回は秋祭りが日本人にもたらした絆作りに触れてみます。