マナーうんちく話535≪五風十雨≫
「味覚の秋」を迎え美味しいものに目移りがする時期になりました。
しかしなんといってもお手頃価格で美味しくて栄養価が期待できるものと言えば「サンマ」ではないでしょうか?
秋風が立ち始めると秋の味覚サンマがやってきます。
「秋の魚」と書く秋刀魚ですね。
では「青串魚」という魚をご存知でしょうか?
また「三馬」は如何でしょうか?
サンマを「秋刀魚」と表現するようになったのはまだ100年くらい前のことです。
コスモスを「秋桜」と表現するようになったのは、山口百恵さんの「秋桜」の曲がヒットしたのがきっかけになったと言われていますが、それと良く似ています。
ちなみに「サンマ」は他の魚のように「魚」編は付きません。
理由はサンマが中国にいなかったので、日本人が色々な漢字をあてたからだそうです。
もともと細長い形の魚を意味する「狭真魚(さまな)」から転化し、歴史的には「青串魚」や「三馬」が充てられていたようですね。
明治39年に発表された夏目漱石の「吾輩は猫である」の中ではサンマは「三馬」と表現されています。
そして大正10年には佐藤春夫は「秋刀魚の歌」を発表しています。
まさに秋が旬で、青い刀のような形をしたサンマを秋刀魚と表現し、この漢字が現在まで続いているということです。
今度サンマをみんなで食べる時に是非「うんちく」を述べて下さい。
折角ですからさらにつけ加えておきます。
最近は国際化の影響で流通も複雑多様になり、加えて冷凍技術が発達しているので魚輸入魚が大変多くなりました。
日本の神様が好きな鯛もしかりですね。
でもサンマは100%日本国内で捕られています。
しかも養殖ではありません。
《秋刀魚が出れば按摩が引っ込む》という江戸時代の諺が有ります。
旬のサンマはとても栄養価が高いので、それを食べたらみんな元気になり、当時町医者の役割をしていた按摩の出番がなくなってしまうという意味です。
『あわれ秋風よ 情あらば伝えてよ・・・
青き蜜柑(みかん)の酢(す)をしたためて サンマを食うはその男が故郷のならひなり・・・』と「秋刀魚の歌」で謳われているように、おろしたての大根に、まだ青いミカンやスダチやカボスを絞って食べると実に美味しいですね。
口先が黄色で、皮がピンと張っているのが新鮮だそうです。