まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
季節は新緑から万緑へとなびき、緑のグラデーションがとても美しい季節で、田植えの準備が本格化する時期でもあります。
青い空が次第に近くなると共に、生命がいきいきとみなぎるような感覚を、目や耳や肌で感じるのもこの季節ならでしょう。
ところで5月20日は二十四節季の一つ「小満」です。
二十四節季の中ではあまり聞き慣れない言葉ですが、麦の穂が実り、次第に満ちて来る頃です。
今もそうですが「生きることは食べること」であり、昔の人にとっては特に穀物の出来不出来は生命維持の根幹にかかわることです。
だから麦の穂が満ちて来たのを確認して少しだけ満足したので、このような名前がついたのでしょうか?それを思うと、いかに飽食の時代であろうとも、食べ物とは常に真摯に向き合いたいものですね。
世界一「飽食の国」「美食の国」になっている今の日本では、本来口にできる食品が無残にも大量に葉気されています。
「小満」は、今では、「草木も花も鳥も虫も、太陽の光を浴びてキラキラ輝く頃」という意味になっていますが、本来の意味を正しく理解すれば、食品廃棄物を何とかしなければと考える気になりますね。
ちなみに実りの季節は秋ですが、麦は初夏に実ります。
そしてこの時期に収穫された麦は栄養価の高い食品になり、多くの人々を潤してくれます。
かつて多くの日本人は白米100%の米は滅多に口にできませんでした。
白米100%のご飯よりは栄養価は高いでしょうが、味の点では劣ります。
だからできれば100%白米が食べたくなるわけですね。
そういった中、明治になり日本にも軍隊が出来るわけですが、陸軍は麦飯だったそうですが、海軍では100%白米のご飯を提供しました。
ご飯だけ比較すれば海軍に入隊した方が、ご馳走が食べられるわけですが、海軍では多くの兵隊が原因不明の病気になります。
当時の医学では原因がビタミン不足に寄るものだとはわからず、原因が追求されるまでかなり時間が要したようですが、味をとるか、栄養に重きを置くか難しいですね。
戦後になって「貧乏人は麦飯を食え」と言った総理大臣がいましたが、本意は所得の多い人は米を食べ、所得の少ない人は麦を食べて、経済原則に沿った食生活をすればいいと言う意味だそうですが、理にかなっていると思います。
美味しい物ばかりたくさん食べてメタボになり、生活習慣病が増えれば医療費の負担に直結します。なんだかんだと言っても健康が大切です。
所得倍増計画を練り日本を経済大国にして、東京オリンピックを招致した総理大臣の言葉にはどこか重みが感じられます。
そういえば、麦の刈り入れの季節になると、麦の穂のような色の「麦星」が見えてきます。
吹く風や、降る雨や雪に季節にマッチした美しい名前を付けた先人の感性は、本当に素晴らしいですが、星と星を結びつけて男と女の物語を作ったことも驚きです。
実は「麦星」は働き者のイメージが漂う夫で、白く清らかな光を放つ「真珠星」といわれる奥さんがいます。
牽牛と織女は誰しも知っている夫婦星ですが、麦星と真珠星は「春の夫婦星」といわれています。
先人は麦を二十四節季に取り入れたり、星に名前をつけたりして大切に扱ってきたわけですが、改めて麦の価値を見直したいものですね。