まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
積雪の多い地方では、雪は非常に恐ろしいものですから「白魔(はくま)」と呼ばれました。特に最近の異常気象は半端ではありませんので、白魔もさらに猛威をふるいそうです。
そして、そのような中から生活の知恵もたくさん生まれています。
木の枝が雪の重みで折れないようにする「雪吊り」と言われる技法は、冬の風物詩となっています。
また、豪雪とまでいかなくて、雪が車や塀に少しだけ積もった状態を「冠雪」と呼びます。
さらに「銀花」「瑞花」「六華(りっか)」等と風流な名前も付けられています。
雪の結晶の美しさを、先人は花の美しさに例えたわけですね。
12月7日は、いよいよ本格的な雪に見舞われる頃ですよ!という時節で「大雪(たいせつ)」です。
11月8日の「立冬」、11月23日の「小雪」に続く二十四節季の一つです。
この時期になると空が灰色の雲で覆われますが、重たい雲に覆われた空の事を「雪雲(ゆきぐもり)」といい、この時期に降る雨は「氷雨(ひさめ)」と呼ばれます。
また、生き物も活動が弱まってきて、全体的にエネルギーが停滞する時期です。
もっとも日本の今はクリスマス商戦がたけなわになり、一年で最も活気が出る頃ですね。
ところで、現在は雪が降ればスキーに行き、温泉に行く人は多く、雪景色を楽しむ感覚はすっかり消えてなくなりましたが、日本には「花見」「月見」等と同じように、降雪や雪景色を眺めて楽しむ「雪見」と言う文化がありました。
例えば、金持ちは料亭などで、芸者と共に「雪見の宴」を開いたり、「雪見船」を浮かべて風流を楽しんでいたようです。
花見の名所、月見の名所と共に「雪見の名所」もあったそうで、一般庶民の雪見の文化は、お金のかからない雪見の名所に出かけることだったとか・・・。
自然と仲良く暮らし、四季の恵みを無料で享受できる風流を持ち合わせていた先人は素晴らしいですね。
しかしこのような文化も、雪の程度に左右されます。
程良い雪に見舞われる地方は、雪の風流を謳歌することが出来ますが、豪雪地帯はそうはまいりません。
雪のために生活が圧迫され、雪おろしのために人が狩りだされ、財力が使い果たされるなど、その苦労は今も昔も変わらないようです。
特に、少子化、高齢化、核家族化、さらに過疎化等が進展している現在は何かと大変です。
だからこそ余計に自然と仲良くしたいものです。
そのためには自然をよく観察し、理解し、自然に対しても素敵なマナーを発揮しなければなりません。
雪・風・雨・山の様子等に素敵な名前を付けたのもそのためでしょう。
師走で何かと慌ただしい時ではありますが、二十四節季のように季節の節目の時くらいは、旧暦の持つ豊かな感性に触れてみるのもお勧めです。
そして新たな気分で新年をお迎え下さい。