マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
国土の約7割を山が占め、四季が明確に分かれており、その移ろいが美しい日本では、山は季節毎に様変わりします。
そして自然と共に仲良く暮らしてきた先人は、その移り変わる様子を細かく見つめ、大変美しい言葉で表現しました。
厳しい冬から、待ちに待った春がやって来て、山の木々の若葉が萌えいずる頃には、まるで山がほほ笑んでいるように感じたのでしょうか?
その様子を「山笑う頃」と表現しています。
そして夏になり、緑がさらに深まり、葉につややかさが出て来る頃になると「山滴る」と名付けました。
やがて秋になり、広葉樹の葉が黄色や赤色に染まり始めると、まるで山全体がお化粧したような雰囲気になるので「山装う頃」になるわけですね。
ちなみに、日本の紅葉は世界屈指の美しさだと言われますが、これは昼夜の寒暖の差が激しい事、葉が色づく広葉樹が多いということが挙げられますが、なんと言っても色鮮やかに色づいた葉を見て「美しい」と感じる、豊かな感性を持ち合わせているからではないでしょうか?
だからこそ、紅葉を観賞することを「紅葉狩り」と言う言葉で表現したり、春の桜前線と同様、「紅葉前線」という世界に誇る美しい言葉を有する国になったと思います。
物は貧しかったけれども、大自然が醸し出すスペクタクルを、豊かな感性で見事に表現した先人は、実に素晴らしいですね。
しかし、紅葉の美しさは桜と同じく、儚いくらい短いものです。
鮮烈な色となって私たちを魅了する期間はほんの僅かで、すぐに木枯らしに吹かれて散ってしまいます。
こうなるとなんとなくメランコリックな気分になり、厳しい冬がやってくるわけですが、あまり歓迎できない便りが届く時期でもあります。
まだ11月初旬ですが、今年も喪中葉書が届き始めました。
毎年この時期になると、講演会やセミナーでよく寄せられる質問の一つに「喪中葉書」がありますので、再度詳しく触れておきます。
年を重ねて来ると付き合いの幅が広くなり、喪中葉書を頂くことは結構ありますが、長い人生でも度々差し出すものではありません。
まして気分の良い知らせではないだけに、迷うことも多々あります。
いざ差し出すとなれば、本当に出すべきか否か?
出すとすれば、いつ、誰に、どのように出したらいいのか?
送られてきたら、本当はどのように対応したらいいのか?
迷うことも多々あります。
そこで、「喪中」に関する正しい知識と、「喪中葉書」のポイントに触れておきます。
次回に続きます。