マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
以前、四季にはそれぞれの色が有ると申しましたが、夏の色は赤(朱)色です。
今日から5月。
木々が萌える朱夏の始まりです。
そして、この時期、掛け軸に好んで使用される「薫風自南来(くんぷうおのずからみなみよりきたる)」があります。
春から初夏になると、南の方から春の香りを一杯に含んだ風が吹いてくる・・・。
薫風とは、温和な南風のことです。
青葉の香りを乗せて来る初夏の風ですが、吹き抜ける風の香りを感じ、爽やかな気配を楽しむことが出来る、一年でも最も過ごしやすい頃ですね。
そして、春を告げる鳥がウグイスなら、初夏に南方からやって来て日本に夏を告げる鳥はホトトギスです。
大変ユニークな鳴き方をします。
卯の花の、匂う垣根に
時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ
「夏は来ぬ」の歌詞です。
気がつけば、垣根に早くも卯の花が咲いている。
そして今年も楽しみにしていた時鳥の初音が聞こえて来る夏が来た。
道元は「春は花、夏はホトトギス、秋は月、冬は雪・・・」と言っているように、先人は初夏に、ひときわ大きく響き渡るホトトギスの鳴き声は、大変多くの人が関心を寄せていたようです。
ちなみに、その年で初めて収穫される作物や果物や穀類や魚介を「初モノ」と言いますが、その年に初めて聞こえて来る鳥の声を初音(はつね)といいます。
但し、全ての鳥の初音を楽しむのではありません。
初音を楽しむのはウグイスとホトトギスです。
また、歌詞に出て来る「忍音」とは、夜密かに鳴くことで、「もらす」とは鳴き声が漏れるように聞こえて来ると言う意味です。
特にホトトギスの初音は、多くの人々が心待ちにしていたようです。
如何にも何かを告げるように鳴くので、人生の指針にしたのでしょうか?
織田信長は「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」と詠んでいますが、豊臣秀吉は「鳴かぬならなかして見せようホトトギス」、そして徳川家康は「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」と詠んでいます。
それぞれ日本史を華やかに彩る武将の句ですが、ここまで明確に性格の違いが出る歌も珍しいですね。
皆様はどのタイプでしょうか?
多くの有名人が歌に詠んでいるように、本当にホトトギスは、文学的には非常に拡張の高い鳥なのですね。
これから、ホトトギスの鳴き声に出会える機会が有れば、是非このコラムを思い出して下さい。
そして、風薫の清涼さは感覚的な清涼さより、むしろ精神的清涼さを意味する場合が多いようです。
「五月病」と言われるように気分がすぐれ亡くなる人も多いようですが、折角の爽やかな季節です。
身も心もキラキラと輝いて歩みたいものですね。