マナーうんちく話527≪結婚記念日≫
卒業・入園・入学・昇進・定年から開店・結婚祝いなど等・・・。
春は何かとお祝い事の多い時ですね。
ところでお目出度い時に縁起を担ぐのは、外国でも日本人でも同じですが、日本人くらい生活習慣の中に縁起を担ぐ国民は少ないのではないでしょうか。
その典型的な物が料理です。
正月に食べるお節料理・お雑煮・七草粥等は全て縁起担ぎの料理だと言っても過言ではありませんね。
料理に使用する食材の全てに、それぞれの意味を持たせたり、語呂合わせにより、より強いインパクトを醸し出しています。
だから、それを食べることにより、味もさることながら、有り難さが増してくるから不思議ですね。
コンピューター万能の時代でも、「そんなの迷信だ」と言って、元旦にトーストやコーヒーで朝食をとる人は少ないです。
大晦日の夜、年越し蕎麦の代りにスパゲティーを食べる人も同様でしょう。
そして、結婚式と言えば昔から鯛が付きます。
キリスト教スタイルで挙式をしても、料理は「鯛のオカシラツキ」と言うのが珍しくありません。
入学式・定年退職・昇進・長寿の祝い等の料理にも鯛は供されます。
鯛は美味しい魚ということもありますが、そのほか姿・形・色合い・名前など総合的に目出度い魚の筆頭格です。
薄赤い色はお祝いの色で、「鯛」と言う名前は「めでたい」に通じます。
だからお祝い事には無くてはならない魚となったわけです。
では、鯛ならどんな鯛でもいいのかと言えば、そうではありません。
先ずは形が整っていて、新鮮でなければいけません。
つまり、切ったり形が崩れたりした鯛は不可と言うことです。
「オカシラツキ」と言われますが、オカシラと言えば「御頭」と誤解されている方も多いようですが、正解は「尾頭」です。
つまり尾から頭まですべて揃っている魚を意味します。
例え鯛ではなくイワシやアジなどでも、「尾頭付き」と言えば一匹丸ごとの新鮮な魚を意味します。
かつて豊作や無病息災を神様にお願いする時に、神様のお好きな鯛をお供えして神事を執り行いました。
神様にお供えする鯛だから、新鮮で、姿かたちがよい鯛が求められるわけです。だから尾頭になったと言うことです。
尾頭の意味はご理解いただけたと思いますが、さらに注意して頂くことは、神様に尾頭をお供えして神事を執り行った後に、その尾頭を下げて、神事に参加した人が食べるわけですが、神様にお供えした鯛を食べるのだから、ありのままの姿で美しく食べなければいけません。
だから和食では、一匹丸ごとの魚の美しい食べ方が問われるわけです。
フランス料理の食べ方と異なり、豊かな精神文化が和食には存在するわけです。
「祝い箸」で美しく召し上がって下さい。
目出度い時の尾頭料理は、神様も共に祝って下さるわけですから、心豊かに、姿勢を正し、美味しく、美しく召し上がって下さいね。
つまり、この時には最高のマナーが求められると言うことです。
また、そうすることにより、心豊かになり、喜びが増してきます。
和食のマナーは実に奥が深いわけです。