マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
そばには冷たい「盛り蕎麦」「ザル蕎麦」と、温かい「かけ蕎麦」がありますが、どちらがお好みでしょうか?
「せいろ」で味わう冷たい(常温)蕎麦は「香り」「音」「感触」全てが味わえます。「このようにして食べなければいけない」と言う決まりは有りませんが、一応参考に頂ければ嬉しいです。
つゆが入った蕎麦徳利(そばとっくり)と、それを入れる蕎麦猪口(そばちょこ)がでますので、先ずは猪口に3分の1位つゆを注いで下さい。
多く入れないようにして下さいね。
薬味はネギ・ワサビ・ダイコンなどが出ますが、ダイコン、ネギ、ワサビの順がお勧めです。
ちなみに薬味は無くても良いような物ですが、やはりなければ寂しいですね。
次に「せいろ」から蕎麦をとりますが、この時沢山とらずに、一口で食べられるように少量だけ取るのがポイントです。
好のみでつゆをつけますが、つけ過ぎはお勧めできません。
濃い口、薄口にもよりますが、概ね3分の1くらいでしょうか。
最後に蕎麦湯を入れたつゆを楽しんで下さい。
残った薬味は全て入れれば良いでしょう。
但し、ワサビは温かい汁に入れると香りが無くなりますので不向きです。
前に述べましたように、蕎麦は昔から「幸運の食べ物」と言われています。
理由は飢饉に強い作物だからです。
ビタミンB1を始め高い栄養価による強壮効果が期待でき、しかも一年に2度も3度も収穫できる昔の人にとっては、とても魅力食べ物なのです。
昔も今も「生きることは食べること」です。
今の日本は、食料自給率が39%しか有りませんが、世界屈指の飽食の国です。
従って今では、蕎麦の価値は多くの食べ物の一つに過ぎませんが昔は違います。
食べ物の主流は穀物で、米のウエイトが非常に高かったわけですが、殆どの地域では一年に一度しか収穫できません。
今のような農業技術は無く、天候に左右される点も多々あります。
だからひたすら神頼みになるわけですが、神様も時には苦しい試練を与えられる時もあります。
つまり、不作の時もあるということです。
他にこれといった代替品がないので、米が不作になればたちまち飢饉に見舞われます。
この時に助けてくれるのが一年に数回収穫できる蕎麦なのです。
まさに、飢えに直面した時の救いの神だったわけです。
そして、江戸時代になり醤油が庶民の間で普及するようになると食文化が発達し、外食文化が花開いてきます。
それに伴いうどん屋や蕎麦屋が続々と開店していき、当時100万人の人口を抱えていた江戸では、座敷で食べられる蕎麦屋が3000件以上存在していたとか。
また、初夏に収穫された蕎麦に比較すると、秋に収穫された蕎麦は何と言っても香りがよく味も格別です。
不老長寿と幸運の願いを込めて、ネギと海老をトッピングして召し上がって頂ければ嬉しいですが、食べ残しはお勧めできません。
江戸時代の金細工職人が、散った金粉を集めるのにそば団子を使用していたので、蕎麦を残すと金運に恵まれなくなると言われています。
縁起物は縁起良く食べて、来年も健康と幸運を掴んで下さい。
《100人の蕎麦食う音や大晦日》という川柳がありますが、年越し蕎麦は日本人を代表する食文化です。
幸運と不老長寿を願う気持ちは今も昔も同じなのですね。
良い年をお迎え下さい。