マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
菜の花畑に 入日薄れ
見渡す山の端(は) かすみ深し
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて におい淡し
今からちょうど100年くらい前に発表された唱歌ですが、小学校の音楽で学習された方も多いと思います。
では、この曲のタイトルをご存知でしょうか?
「朧月夜」です。
春の夜、ほのかに、お月様が霞んでいる様子を指す季語ですが、本当に美しい言葉ですね。紫式部の源氏物語にも「朧月夜」は登場しますが、たいそう美しくて艶やかな女性だそうですね。
何もかも清らかで、春風がそよふき、赤や青や黄の花が咲き乱れ、お月様が霞んで見えるのどかな風情は、日本ならではの平和な世界だと思います。
ところで、毎年4月8日に執り行われる仏教行事をご存知でしょうか?
元旦に初日の出を拝し、お願い事をされる人には是非知って頂きたい行事です。
既にこのコラムでも取り上げていますが、4月8日は「灌仏会(かんぶつえ)」です。平たく言えば「花まつり」で、お釈迦様の誕生日を祝うお祭りです。
クリスマスのように物が売れるお祭りではないので、日本の年中行事の中でもあまりメジャーではなくなりましたが、お釈迦様の像に甘茶を注ぎ、そして甘茶を飲んで、健康をお祈りする行事の事です。
百花繚乱の花が咲き誇る時のお祭りだから「お花まつり」と言います。
また、甘茶を掛ける理由は、お釈迦様が誕生された時に龍が現れて、甘露の雨を降らした事にちなんでいます。
日本は神様(神道)仏様(仏教)の国で、仏教系の信徒数は約8900万人だと言われています。日本文化や国民生活に大きな影響を与えてきたのも仏教です。
一方日本におけるキリスト教系の信徒数は約300万人だと言われています。
このような国で、キリストの誕生日は国民的なイベントのように早くから、しかも盛大に祝うのに、お釈迦様の誕生日にあまり関心が向かないことを残念に思いますが、いかがでしょうか?
ところで、お釈迦様が誕生された時に発せられた大変有名な言葉があります。
「天上天下唯我独尊」です。
「この世の中で我よりも貴い存在はない」と言う意味ですが、「自分が一番偉い」と言う自惚れの意味ではありません。
「我」=「個々人」であり、それぞれの存在こそが尊いと言う意味で使用されます。つまり、自分とは異なる考え方をしている人がいても、それを理解し、尊重することが大切であると言う意味ですね。
「お互い自分と言う存在は、何物にも代えがたい大変尊い存在なのですよ。
そして何にもまして尊い命なのですよ」。だから、それぞれが異なっていいわけで、大切な事はそれを理解し合うことである、と言うのが「天上天下唯我独尊」の本来の意味です。
そういえばプロトコール(国際儀礼)の基本理念の中にも、「他国の文化を尊重する」という項目があります。
自国の、宗教や文化や礼儀作法や歴史に関心を持つと同時に、他国のそれらも尊重すれば、互いに争いは無くなるのですが・・・。