マナーうんちく話521≪お心肥し≫
寒い日が続いておりますが、僅かに日が長くなってきた気がしませんか?
都市部に住んでいる人は目に触れる機会が無いかもしれませんが、この時期になると間もなく「フキノトウ」が現れる頃で楽しみな季節です。
フキは日本原産で野や山や人里等どこでも見られますが、雪の合間から、チョコッと顔を出している姿を見ると、逞しい生命力や春の息吹が感じられ、とても嬉しくなり、何かいい事起こりそうな気持になります。
長い冬をひたすら耐えて春の訪れを待ち続けた昔の人にとって、若菜やフキノトウを摘むことは、この上ない喜びだった事でしょうね。
フキの花茎を「フキノトウ」と呼び、間もなく小さな可憐な花をつけますが、食べて美味しいのは、まだ花が開かないで、包葉に包まれた若い蕾(つぼみ)です。
焼いたり茹でたり天婦羅にして食べると、何とも言えないホロ苦さを感じる、まさに早春の美味です。
だからフキノトウは「春の使者」とも言われております。
凍るように冷たい土の中でも、春に向けての準備が滞りなく進んでいるということです。
そして、最近ではすっかり、口にしたり耳にしたり目にしたりすることが無くなりましたが、1月20日は、正月気分を一掃する「二十日正月(はつかしょうがつ)」です。
餅花やまゆ玉のような餅の飾り物も20日までです。
また、正月料理や正月用の保存食を、魚の骨に至るまで全て食べつくす「骨正月」とも言われます。
元旦が「男正月」で、1月15日が「女正月」、そして1月20日は「二十日正月」、もしくは「骨正月」になり、これにて正月の気分も飾りも食べ物も一掃されます。
自然からの恵みに感謝の意を込めた、日本ならではの風習で、個人的には、西洋の風習をむやみやたらに取り入れるより、このような日本人の生活に密着した日本古来の風習を、大切に残す方が大切だと思っています。
そして正月の祝い納めとして食す魚がブリです。ブリは成長期、つまり大きさにより、名称がハマチとかブリに変化する出世魚として江戸時代から大変重宝され、全国各地の食文化とも密接に関わっていますが今が旬です。
ところで、20日で正月気分も終わり、本格的に物事を進める時ですが、新年の初めに立てられた計画を再認識するのもお勧めです。
「志しある者は事竟になる(こころざしあるものはことついになる)」と言う言葉が中国に有ります。
しかし、ブリのように順調に登りつめていくにはそれなりの手法が必要です。
具体的には、明確な目的を持って志を立てたら、次に、それを成し遂げる強い決意が必要だと言うことです。明確な目的と強い意志、つまり「やる気」が有れば何事も可能になると言うことですね。
日本では武田信玄が詠んだ「為せば成る、為させば成なむ・・・」が有名ですが、他にも「意志有れば通ず」とか、「思う念力岩をも通す」と言う言葉もおなじみですね。
ブリのように出世を希望するか、ささやかな幸せを願うかは10人10色だと思いますが、いずれにせよ、世界一長寿の国において、長い人生を、計画を立てて過ごすことはとても大切だと思います。
加えて、折角立てた目標で有れば、三日坊主にせずに、諦めないことが大切ですね。
フキは蕾の時には美味ですが、やがて成長して大きくなると硬くて食べられなくなります。盛りが過ぎ食べられなくなった状態を「薹が立つ」と言います。
人間で言えば年頃を過ぎると言うことです。計画は年頃を過ぎる前に立てることが大切です。つまり時期を逃さないことです。
それでは、既に薹が立っている人はどうか?と言えば、ご安心ください。
食用には不向きでも、美しく咲いて、目を楽しませる方法も有ります。