まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
今日から6月ですね。
「もう6月か」と考えるか、「まだ6月か」と捉えるかは、人それぞれですが、いずれにせよ、緑のそよ風から、生暖かい風に変わる時期です。
6月は英語では「June」ですが、これは古代ローマにおいて、ローマ神話に登場するJupiterの正妻で、結婚と出産を司り、女性と家庭を守る女神である「Juno」を6月に祀ったからだといわれています。
各国には、結婚に関するジンクスが多々ありますが、ヨーロッパから伝わった「6月の花嫁は幸せになれると言う《June Bride》伝説」は、「幸せ婚」の代名詞みたいなものですね。
ただ、ヨーロッパと日本では気候風土がかなり異なるので、このジンクスを日本でそのまま受け入れるのは、無理が有るような気がします。
ヨーロッパでは、3月から5月にかけて農作業が多忙期を迎え、そんな頃の結婚はあまり歓迎されません。
しかし、農作業も6月になればひと段落つき、その上雨が少なくなり、比較的晴天が続くので、結婚式や各種イベントにはもってこいの季節になり、ここで結婚式を挙げれば、みんな喜んで参加してくれるわけですね。
ちなみに、日本は全く逆です。
6月になれば、田植えが始まり、農家にとっては一年で稲刈り時と同じ位多忙期になります。
しかも、梅雨に入り、ジメジメ、蒸し蒸ししてきます。
披露宴に招待されても、雨が降れば、お洒落が大変気になります。
やはり、日本では、春と秋が最高ですね。
その前に、若者が結婚に前向きになって欲しいものです。
ところで、日本では6月の事を「水無月(みなつき)」と言いますが、これは「田植えをして、苗が田んぼにしっかり根付く《みな着く》」と言う説と、「田植えが終わり、農作業が《みな尽きる》」という説が有りますが、いずれも農事に関わりが深いようです。
そして6月は「衣替え」です。
気候によって、服装を変えるのは、四季が美しくて、明確に分かれている日本ならではの風習です。
平安貴族からの伝統で、現在では6月と10月の年に2回に分かれていますが、武家の世界では非常に厳格な決まりが有りました。
その名残でしょうか、今でも着物の世界では、6月と9月は単衣(ひとえ)、8月は絽(ろ)、10月以降は袷(あわせ)と言われる決まり事が存在します。
つまり、単衣は6月にならなくては、どんなに気温が上がろうとも着てはなりません。また、袷はどんなに寒くなろうとも10月になるまでは着ることができません。
この決め事は、殆ど絶対的で破ると恥をかいたものです。
このように、先人は、衣替えにより季節感をしっかり味わい規律を保ったのでしょうね。
今では、衣生活やファッションも多様になり、普段の服装には決まりが有りません。気温や湿度にマッチさせ、臨機応変に組み合わせる方が合理的に思えるかもしれません。
しかし、千年も語り伝えられてきた「衣替え」と言う日本独特の美しい言葉はいつまでも残しておきたいと考えます。
衣替えは、日本人が自然に逆らわず、自然と真摯に向き合って生活してきたあかしで、今で言う「省エネ」の本質をなしていると思います。
さらに、「今日から夏になり暑さが増してくるけど元気で頑張るぞ!」という前向きの気持ちの表れでもあり、必要な衣服と不必要になった衣服を整理する日でもあり、四季の移り変わりを感じ取る日でもあります。
今日からスタートした「超クールビズ」と言う言葉により、「衣替え」の本来の意味が薄くならなければいいのですが・・・。