マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
日本は四季に恵まれた上に、南北に細長いので、一年を通じ様々な花を愛でることができます。
清楚な感じがする青い花、幸せのイメージが湧く黄色い花、情熱的な感じがする赤い花・・・。
春を華やかに彩る桜も良いですが、心に沁みる初夏の花、ハナショウブも格別な趣が有ります。
照りつける陽光のもと、凛と咲きつつも、どこかけなげで、日本人の感性に響くものが有るせいでしょうか、昔から「菖蒲(アヤメ)」という名前で、とても親しまれている花で、沼地や水辺などに好んで咲きます。
和の感じが漂う典型的な花ですから、日本各地の公園や庭園でも見る事が出来、訪れる人の心を和ませてくれています。
そして、菖蒲によく似た花で、「杜若(カキツバタ)」が有ります。
アヤメもカキツバタも今が見頃ですが、同じ科に属す花なので、その区別が難しいとされています。5月19日の山陽新聞に、笠岡市の菅原神社の杜若が掲載されていましたが、初夏には紫の花がお似合いですね。
しばし女性の美しさにたとえられますが、どちらも大変美しくて、選ぶのに苦労すると言う意味で、「いずれ菖蒲か杜若。」と言う諺が有ります。
平安末期の武将で、源頼政が手柄を立てた時、その褒美として、「菖蒲前(あやめのまえ)」と言う大変美しい女性を頂戴するわけですが、多くの美女の中から菖蒲前を選ぶように言われて、大いに迷ったと言う故事に由来するそうです。
何ともうらやましい話しですが、今の日本は、物質的に豊かになり過ぎて、服装や食事内容など、選ぶのに苦労するケースが多々ありますね。
これは嬉しい選択ですが、反面、選んでばかりいられない局面に遭遇する時もあります。「背に腹は代えられない」とでもいいますか、深刻な事態に陥り、不本意な決断を余儀なくされるケース等です。
勤めていた工場が不景気で閉鎖になり、退職するか、遠距離に転勤するか?さらに重篤な病気になり、リスク覚悟の上で手術をするか否か?
これらのように選択肢が限られている場合は非常につらいものが有ります。
さりとて選択肢が多すぎてもうまくいかないケースもあります。
加えて、選んでばかりいて結局損をすることもあります。
「選んで粕(かす)を掴む。」と言うことです。
ここでの粕とは酒粕の事です。
つまり「つまらないもの」と言う意味です。
どこで妥協するか?を見極めて、あまり欲張らずに、程良いところで妥協することも大切ですね。
特に、お見合いとか就活の場面では、そのように感じることが多々有ります。
優柔不断で、物事をタイミング良く決められない性格の人は考えモノです。
優柔不断でも、石橋を叩いて渡る性格も感心できません。
今、大変な難婚化時代のようですが、えり好みばかりでは無理です。
結婚というものは、あくまで二人で幸せな家庭を築いていくものですから、最初から完璧さを追求するのもどうかと思います。
「馬には乗ってみろ、人には沿ってみろ。」ですね。
それと、食べ物のえり好みは感心しません。
上品な諺ではありませんが、英語の「乞食は選り好みできない。」という諺があります。日本語の「飢えては食を選ばず。」でしょうか?
腹が減った時は、何でも食べなければ生きていけない。
つまり、生活に困った時には、不平不満は言えないと言うことです。
物が豊かになり過ぎて、何を選ぶか迷うことは楽しい事ですが、それでは心豊かになれません。
時には、あえて「飢えては食を選ばず」と言うことを経験することが大切だと考えます。