マナーうんちく話494≪和顔愛語≫
「卯の花の匂う垣根に、ホトトギス早も来鳴きて、忍音もらす、夏は来ぬ」。
よくご存知の、小学校唱歌「夏は来ぬ」の歌詞です。
5番までありますが、何番までご存知でしょうか?
国文学者佐々木信綱作詞だと聞けば、全ての歌詞が格調高く思えるので不思議ですね。
暑い日が続いておりますが、この時期になると、卯の花が咲き初め、それに連れて、ホトトギスの声も聞こえてきます。
もう夏だなー!と実感する頃ですね。
「卯の花」が初夏を告げる花とすれば、「ホトトギス」は初夏を告げる鳥で、いずれも日本人には昔から大変なじみが深く、卯の花が咲いてホトトギスが鳴くようになると、いよいよ田植えの準備に忙しくなるわけです。
ところで、卯の花とホトトギスと田植えが夏の始まりを知らせてくれるわけですが、「礼儀の始まり」は何かご存知でしょうか?
中国において、周の時代から漢の時代にかけて、儒学者によってまとめられた、礼に関する書物で「礼記(れいき)」という本が有ります。
礼についての解説書で、「およそ人の人たる所以(ゆえん)は礼儀なり」と説いている本です。
それによると、「礼の始まり」は、
①容態を整える
②顔色を整える
③辞令を順にすること
の三つであると言われております。
「礼儀の始めは、容態を正し、顔色を斉(ととの)え、辞令を順にするに在(あ)り」ということです。
そして、「容態を整える」とは、姿勢及び態度を正し、立ち居振る舞いに注意すると言う意味です。
また、「顔色を整える」とは、嫌な顔つきをしないで、好感の持たれる顔つきをするということです。
最後に、「辞令を順にする」とは、言葉遣いに注意し、その場に相応しい挨拶をキチンとすることです。
好感の持たれる態度や表情、美しい笑顔に加えて、正しい言葉遣いができればかなりいい人間関係が築けます。
しかし、現実にはこの三つが、なかなか上手に機能していない気がします。
その理由は、多くの人々がマナーの基本をしっかり教えられた経験はなく、どちらかと言えば、見よう見まねで覚えてきた要素が多いからだと感じます。
例えば、挨拶の仕方もそうです。
「立ってする挨拶」「座ってする時の挨拶」等の基本を、正しく理解している人は意外に少ないのではないでしょうか?
態度や表情もしかりで、笑顔の素敵な人や、正しい姿勢の人も少ないように思えます。
言葉遣いもそうです。
何かあれば、「すいません」と言う言葉が聞こえてきますが、正しくは「すみません」です。さらに「すみません」と「ありがとう」の使い分けが明確ではありません。
礼の初めがこの調子ですから、「箸や椀」の扱い方、冠婚葬祭、贈答、年中行事、人付き合い等などのマナーがバラバラになり、正しく共有できていません。
最近、職場や家族や地域の人間関係がおもわしくないなーと思われたら、礼の初めの再認識をお勧めします。