マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
最近の景気回復ムードを受けて、「母の日」商戦が例年より、かなり活況を浴びていたような気がします。
家族が互いに協力し合い、精一杯のプレゼントをして、日頃の感謝の気持ちを母に伝えるのは、微笑ましくて良いものですね。
日本の礼儀作法は儒教の影響を受けているせいか、男尊女卑的な部分もあり、加えて家制度のもと、女性や母親が優遇されることは殆どなかっただけに、アメリカから入って来た「母の日」のイベントは今後も大切にしたいですね。
そして、古今東西、母の存在は子どもにとって普遍的です。
「女は弱し、されど母は強し。」はフランスの詩人・小説家のユゴーの言葉です。
たとえ弱い女性でも、結婚して子供を産んで母親になると、責任を持って子どもを正しく躾けると言う意味です。
また中国には、子どもの躾の大切さを説いた「慈母(じぼ)に敗子(はいし)あり。」と言う言葉が存在します。
さらに「子どもの運命はその母親に委ねられる。」とナポレオンは言っています。
子どもにとって、その母親の躾や教育の仕方が非常に大切ですよ!と説いているわけですね。
また日本では、「子は親の背中を見て育つ。」と昔から言われております。
要は、世界中の国の子どもは、母親の姿を真似て育つと言うことですね。
母の表情や態度、母の発する言葉、母の立ち居・振る舞い等を見て育つから、母親が子どもに与える影響が、いかに大きいかがよく解ります。
このコラムでも何度も触れましたが、「お里が知れる」と言う言葉が有ります。
母がしっかりしていれば子もしっかりするが、母がだらしなければ子もだらしないと言う意味です。
非常に耳が痛い言葉のようですが、私は個人的にはこの言葉は的確に的を射ていると思います。
そして、母は子どもに、人間として「いかにより善く生きて行くか?」と言う事を、家庭で具体的に教えることが大切だと思っています。
「より善く」育てると言うことは、「健康に育てること」と「思いやりのある子に育てること」だと考えます。
そのためには、「賢い食卓」を醸し出す事も必要ですし、素敵なマナーを発揮することも大切ではないでしょうか?
戦前の話ですが、日本には「良妻賢母教育」と言われるものが有りました。
良妻賢母とは早い話し、夫に対して「良き妻」であり、子どもに対しては「賢い母」であると言う意味ですが、日本の女子教育の中心的理念の一つとされたわけです。
現在では、「男女共同参画社会」ですから、甚だ理不尽な事だと思われるかもしれませんが、私は見習うべき点は多々あると思っています。
ただ、夫に対して良き妻の姿は10人10色です。
従って、良妻像は個々の夫婦で話し合えばいいと思いますが、少なくとも子に対して賢い母であることは、非常に大切だと考えます。
5月12日は「母の日」です。
日頃の母の苦労を労り、感謝の気持ちを表す日です。
色々とプレゼントを贈るのも良いでしょうが、三島由紀夫のこんな言葉は如何でしょうか?
「母親に母の日を忘れさすこと、これ親孝行の最たるものといえようか。」
過度なコマーシャルに左右されて、一年に一度の母の日に浮かれるのではなく、常日頃から感謝の気持ちで接することが大切だと思うわけです。
そこで、戦前の「良妻賢母」に対して、平成の「良夫賢父」を目指すのもお勧めです。
家庭で「良妻賢母」と「良夫賢父」が存在すれば、いじめ問題を始め多くの深刻な問題は解決できるはずです。