マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
3月20日は太陽が真東から昇って真西に沈む「春分の日」で、昼と夜が同じ長さの日です。そして、秋分の日と同じく、二十四節季では、とても大切な季節の節目で、農事ではこの日を目安に色々な種をまきます。
ちなみに私も、これからホウレンソウ、水菜、春菊等の種まきを行います。これらの種は、誰が蒔いても余程の事が無い限り、先ず芽が出ますので先が楽しみです。
ところで、七十二候の「春分」の始めは、「雀始めて巣くう」とあります。
雀は日本人なら誰でも知っている、とても身近な鳥ですが、この雀が枯れ枝などを集めて、せっせと巣作りを始める頃だとされています。
しかし、燕の巣作りは良く見かけますが、雀の巣作りは見たことが有りません。皆様は如何でしょうか?
人間の勝手気ままな都合で、雀には迷惑な話だと思いますが、雀は、春には苗の害虫を食べてくれるので「益鳥」として親しまれますが、秋には稲の籾米を食べるので「害鳥」として嫌われます。
田んぼの中の一本足の「かかし」も、元々は、雀を追い払う目的で作られたようです。
《雀の子そこのけそこのけお馬が通る》
小林一茶
道端で遊んでいる雀たちよ、お馬が通るから、危ないので、そこをおどきなさい!と言う意味でしょうか。
いちいち人間に注意されなくても、馬や車にひかれるほど、のろまな雀は、昔も今もいませんが、それでも、無邪気に遊んでいる小さい生き物を見ると、つい、思いやりの心を掛けたくなるのは、今も昔も変わりませんね。
話は変わりますが、ある人を見て「素敵な人だな―」と、思ったことは有りませんか?
その人は、女性だったらスタイルが良くて、お化粧も完ぺきで、しかも身に付けている物がブランド物で統一されているからでしょうか?
また男性なら、背が高くイケ面だからでしょうか?
勿論外見の美しさもとても大切です。
でも、これだけでは、場がなごんだり、雰囲気が和らいだりしません。
他に「プラスの要因」が有るはずです。
これがいわゆる、「心の美しさ」ではないでしょうか?
外見の美しさに対して、「内面的美しさ」ですね。
今は、卒業式・入学式・入社式等何かと儀式の多い時期です。
外見の美しさを追求するのも大切ですが、さらに内面的美しさを加味される事をお勧めします。
マナーの視点で言えば、何度も触れて参りましたが、先ず、「美しい立ち居振る舞い」をお勧めします。
そのためには先ず「姿勢」を正すことです。
「素敵な人だな」と思われたら、次にその人の立ち居振る舞い、言葉遣いを観察して下さい。そして、その人の良い所を自分にも取り入れてみることです。
素敵だと思われた人を注意深く観察していると、姿勢が良いとか、お辞儀が格好良いとか、笑顔がいいとか、常に聞き手にまわっているとか、人の事を思っているとか、それなりの共通点が浮かんでくるはずです。
それが理解できると、季節の節目に、自分がどう生きて行くか?というヒントが湧いてきます。
春分の日は、季節の節目の日でもありますが、自分自身の事を省みる日でもあります。
ご先祖に感謝しつつ、今日から、身も心も美しい「本当の美しさ」に向かって一歩を踏み出されてはいかがでしょうか?
但し、この生き方は、効率的な生き方とは決して言えません。
加えて、便利さ至上主義からも程遠い生き方です。
しかし、心を込めて繰り返すことで、本当の生きる喜びが見えて来る気がします。春分の日は、家族が集い、共にご先祖様に感謝し、家族それぞれの生き方を話し合う日でもあると考えます。