マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
2月は「節分」「立春」「初午」、そして「聖バレンタインデー」と多彩なイベントが目白押しでしたが、年中行事には、長年続いた伝統的なしきたりの中に、先人たちの願いや祈りや生活の知恵が込められています。
経済効果は、西洋から入って来た「クリスマス」や「バレンタインデー」には及びませんが、日本のしきたりは、先人が長い間育んできた大切な行事です。
正しく理解して、先人たちの思いに心を寄せてみるのも良いものです。
意外に、心豊かな生活を送るためのヒントが詰まっているかもしれません。
そこで、数回に渡り「お雛様に関するお話し」をランダムですけど、進めてまいります。女性も男性もお気軽にお付き合い頂ければ嬉しいです。
前回の「バレンタインデー」はキリスト教式の「愛」とか「結婚」がキーワードになっていますが、お雛様は神様(神道)・仏様(仏教)の国日本の「結婚式」がテーマになっています。
先ずは童謡、「うれしいひな祭り」の歌詞を参考にして下さい。
あかりをつけましょ ぼんぼりに お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの 笛太鼓 今日はたのしい ひな祭り
お内裏様(だいりさま)と おひな様 二人並んで すまし顔
お嫁にいらした 姉様に よく似た官女の 白い顔
金の屏風に うつる灯(ひ)を かすかにゆする 春の風
すこし白酒召されたか 赤いお顔の 右大臣(うだいじん)
着物を着かえて 帯しめて 今日は私も 晴れ姿
春のやよいの このよき日 なによりうれし ひな祭り
以上ですが、日本人なら誰もが知っている童謡だけに幼い頃に口ずさんだ方や、祖父母に買って頂いた雛人形を思いだされた方も多いのではと思います。
童謡としては非常に新しい曲で、昭和10年にサトウハチローが作詞して11年にレコード化されたそうです。
サトウハチローはこのコラムでも取り上げた、「小さい秋みつけた」とか「リンゴの唄」の作詞者としても有名ですが、「うれしいひな祭り」の歌詞には、色々なお雛様が登場しますので、先ずは登場人物の紹介をいたします。
この曲の影響はとても大きく、勘違いをされている人も多い箇所が有ります。曲の2番目に表現されているように、雛飾りの最上段の一対の人形を、「お内裏様」と「お雛様」と呼んでいますが、これは正しくないようです。
ちなみに「雛」とは、生まれたばかりの小さい鳥を「雛鳥」と言うように、「小さい」と言う意味です。
また「内裏(だいり)」とは、天皇の住まい、すなわち御所を意味し、「内裏雛」とは天皇、皇后の姿を現した「男雛」と「女雛」で、最上段に飾ります。
二段目は、内裏雛に仕える三人官女(さんにんかんじょ)で、お祝いの「白酒」を持って仕えています。
三段目は、お囃子(はやし)を演奏する五人囃子(ごにんばやし)、つまり今風に言えば打楽器と笛による楽団です。
四段目は、力を司る若い右大臣、知性と教養を持ち合わせているお年寄りの左大臣の随身(ずいしん)です。
五段目は、宮中で色々な仕事に携わっている任丁(じちょう)と呼ばれる人です。今風に言えば雑用係でしょうか。
そしてこれらの人物の他、六段、七段には豪華な「嫁入り用具」が飾られます。
この頃から、結婚式は豪華だったのですね。
今では何もかも派手になり、雛飾りも、中には九段飾りや十一段飾りが有りますが、基本は七段で、「お内裏様の結婚式」を再現したものだと認識して頂いたらいいと思います。