マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
国際化の進展に伴い、諸外国の、幅広い文化や知識を吸収することはとても大切だと思いますが、その前に、自国の文化や歴史や礼儀・作法に精通することも必要だと考えます。
しかし、残念ながら日本には世界に誇る、あるいは、世界平和に広く貢献できる素晴らしい文化や礼儀・作法が有るにもかかわらず、その存在感は年々薄れていく気がしてなりません。
物質的には豊かになり、便利になったが、幸せではないと感じる人が多いのはそのせいではないでしょうか?
そこで、これから当分の間、自国の文化やしきたりについて詳しく触れて参りたいと思います。
先ずは、日本人が一番大切にしてきた「正月」に関する内容の話を進めますが、今回はその前座として、「ハレ」と「ケ」に触れます。
「ハレ」と「ケ」は、日常生活の節目や折り目等のリズムを指し、年中行事の根源をなす概念です。
そして、「ハレ」は、祭や年中行事などの「非日常的」な、特別な時間や空間を意味します。
気象用語では、雲の少ない空を晴れと表現するように、心地よい空間や時間を指す場合が多いようです。
「心が晴れる」とか、「晴れて夫婦になる」とか、「晴れ舞台」や「晴れ着」等と表現します。
また、年中行事などでは、「正月」が最高のハレの日です。
加えて、入学式や結婚式や753や成人式などもハレの日になります。
ところで、「ハレの日」の日には、普段着ではなく、「晴れ着」を着て、普段では食べることのできない「ご馳走」を食べます。
例えば、ハレの日の食べ物には、白米、赤飯、お餅、尾頭付きの魚、酒などが有ります。
ちなみに、昔の人にとっての白米は、ごく一部の上流階級の人達の食べ物で、一般庶民の主食は麦、粟、稗等です。
従って、白米やお餅などは最高のご馳走で、まさにハレの日にしか食べられなかったわけです。
しかし、ハレの状態はいつまでも続きません。
あっという間に、日常に帰えるわけですが、ハレの日から日常生活に戻った状態が「ケ」です。
つまり、朝起きたら、普段着に着かえて、麦や粟や稗など日常の食事をして、仕事に精を出さなくてはなりません。
今の日本は、モノが豊かで、世界一の「飽食の国」「美食の国」になり、世界一贅沢な食生活をしているので、「ハレの日の食べ物」と「ケの日の食べ物」の境は無くなり、「ハレの日」が、すっかり日常化しました。
衣食住すべてがそうかもしれません。
しかし、「ハレとケ」の概念は、年中行事のしきたりやマナーの根源をなす、とても大切な捉え方です。
TPOに応じて、フォーマルとインフォーマルの区別を明確にして、心構えも、身なりも、装飾も、食べ物も変えて、メリハリをつけるのも良いものです。