マナーうんちく話323≪ちゃぶ台とお袋の味≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:人間関係を良好にするマナー

「グルメ便り」が待ち遠しい頃になりましたね。
夏バテを元気にさせてくれる涼気と共に、海の幸、山の幸が存分に味わえる日本の秋・・・。

世界一「飽食の国」と言われ四半世紀以上になりますが、改めて、豊かな食生活を謳歌できる、国と時代に暮らせることに感謝したいものです。

もっとも食生活が豊かになり過ぎたせいで、新たに生じた問題も多々あります。

一番に思い浮かぶのは「孤食」でしょうか。
私たちは通常一日に3回、一年に1000回以上食事をしますが、その内、家族揃って食事をする回数は、私達が育ち盛りの頃は750回から800回位でしたが、今は、せいぜい300回前後でしょうか?
世界でも珍しい現象でしょうね。

また「食品廃棄物」の量も由々しき事態に陥っています。
食料自給率が先進国中ワースト一の国が、食品廃棄物、すなわち残飯を世界一排出する国になっています。世界に誇る「MOTTAINAI精神」を有する国が、何とも皮肉な現象ですね。

ところで、以前「マナーうんちく話」でも取り上げましたが、「団欒」という
漢字があります。「だんらん」と読める人は多いと思いますが、書ける人は少ないのではないでしょうか?
物質的な豊かさとは裏腹に、影が薄くなってきた典型的な漢字だと思います。

そして「団らん」といえば、「ちゃぶ台」を思い浮かべる方も多いと思います。
但し、若い人は知らないと思いますので簡単に解説します。

「ちゃぶ台」とは、明治20年代に、日本の家具屋が考案した食卓で、4本足の、折りたたみができる丸テーブルです。

それまでは、「銘々膳」スタイルで食事をしていた日本人にとって、家族が揃って和やかに食事ができるこのスタイルは、かなり衝撃的な出来事だったようですが、以後すっかり日本の家庭に馴染んでいき、やがて日本の典型的な食事のスタイルになりました。

このちゃぶ台の一番の利点は、同席者が全員、テーブルの中心を向いて座るので、家族のコミュニケーションを図るにとても適していることです。

しかも、円卓で、折りたたみのできるため、誰でも簡単に移動でき、とても便利がよかったので人気が出たのも頷けます。

さらに、食事をする際、人数や座る位置を限定することなく、柔軟性があり、ちゃぶ台を囲んで、家族揃って「頂きます」の掛け声と共に、食事がスタートし、会話が弾みます。だから、家族の貴重な情報交換の場であり、子どもへの躾の場で有ったわけですね。

そこには、今のように「美食」とか「グルメ」という言葉は登場しませんが、「お袋の味」が存在しました。

日本は食の安心・安全にはとても敏感ですし、栄養学や食品学も発達しています。料理番組もチャンネルを回せばどこかで放映されています。加えて、日本の台所は世界一の物持ちです。

しかし、「食事」は、献立や味や栄養ばかりでは成り立ちません。
愛情を込めた手作りの温もりがある「お袋の味」に、「家族の団らん」が加味されて形成されるものです。

今、「食育」がブームです。
子どもたちに、食事の大切さを教えることはとても大切です。
しかし、その前に「大人は大丈夫なの?」と聞きたいところです。

戦後の日本の、平和な家庭を象徴する「サザエさん」の食卓を参考にされては如何でしょうか?



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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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