マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
前回「座布団」についてお話ししたので、今回はそれに関連して「正座」のお話しです。
今時のことですから、多分正座が得意な方は少ないのではと思います。
しかし、和室、畳、着物、和食とくれば正座は避けられない作法の一つです。
正座は窮屈で堅苦しそうに思えますが、見栄えも良いし、健康にも良いので是非お勧めします。既にお話ししましたが、日本人女性が、畳の上で、着物を着て、正座している姿は世界の男性の憧れだったと言われました。そして、その立ち居振る舞いは、日本人ならではの美しさを兼ね備えており、世界に誇る文化ではないでしょうか?
そもそも正座というスタイルが確立されたのは江戸時代で、それ以前は、まだ畳もあまり普及しておらず、座り方は「あぐら」が一般的だったようです。それが江戸時代になり、畳の普及と共に、諸国の大名が将軍に拝謁する時、「私は将軍に服従します」という意思表示として、「膝を屈する」、正座というスタイルが生まれたという説が有力です。
ただ、この頃は正座というより、「かしこまる」という名前が一般的で、明治になり当時の文部省が、日本人の正しい居座り方として、「正座」を普及させ、今でも、和室を始め、葬儀・法要・和食等の席では大切なマナーになっているのはご承知の通りです。
また、正座をする場所は畳の上はもちろんですが、板の間等でもおこないます。
さて、正座の仕方ですが、
・床に膝まづきます。
・臀部を踵の上にのせ、前回お話しした「き座」の状態になり、
・足を延ばし、踵が臀部の下になるようにします。足を延ばす際に、両足を同時に伸ばすのではなく、交互に伸ばすのが美しく見せるポイントです。
※和室での立ち居振る舞いの時には、多くの場合、交互に足を動かす事をお勧めします。
・背中はまっすぐ伸ばし、手は膝の上において下さい。
・視線は真っすぐです。
以上で正座は簡単にできますが、その前に、正座に適した服装に注意して下さい。
先ず気になるのが、ミニスカートと素足、それに窮屈な服装はお勧めできません。
ゆったり目の服に、女性なら長いスカートにストッキング着用がお勧めです。さらにロングヘアーの人は髪も束ねて下さい。挨拶する時に髪が乱れるのを防止するためです。
以上、健常者なら比較的簡単なことですが、問題は正座の持続時間です。
足がしびれ、次の動作が思うようにできなかった経験をお持ちの方も多いと思います。
出来るだけしびれが来ないようにするには
・足の親指を少し重ねる。
・姿勢を正す(背筋をピーンと伸ばし、鼻と臍がまっすぐになるよう、また耳は肩の上に)
・体の重心を前後、左右に動かす。
・しびれたら、き座の状態で、しびれが引くのを待つ。
以上ですが、いずれも特効薬にはなりません。慣れることが一番です。また、自分の状態を把握しておくことも大切。そして日頃から、立った時にも、座っている時にも、常に意識して正しい姿勢を心がけることです。そうすれば、周囲から見られても、美しく見えるし、健康にも良いです。
逆に正座で、身体を正しい姿勢にすることも考えられます。
毎日少しずつ実行されることをお勧めします。
改まった席で、正座が好ましいケースは日本には多々ありますが、ひざ等が悪くて思うようにできない場合は、理由を述べて、一言お断りをされたらいいでしょう。
また、お年寄りやひざ等が悪い方には、予め、「正座補助具」を用意したり、「お楽にして下さい」等と声をかけてあげられる事をお勧めします。
そして、「お楽にどうぞ」と言われたら、「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせていただきます」とお礼を述べて、楽にされたらいいですね。
これで互いに心と心が通い合います。
繰り返しになりますが、正座は,相手に対する最高の敬意の表現であり、見た目も美しいし、身体にも良い、日本人ならではのすばらしい文化です。窮屈だからと言って避けるのではなく、前向きに取り組み、慣れることをお勧めします。
身も心も洗われますよ。