マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
【冠婚葬祭の知識とマナー40】 喪中葉書の、出し方と受け取り方のマナー
年賀状の準備をする頃になりました。
そして、この時期、毎日のように送られてくるのが「喪中葉書」です。
出すべきか否か?また、いただいた時の対応は?何かと迷いが多いのが、この葉書ですね。そこで今回は喪中葉書に触れてみます。なお、年賀状のマナーについては、22年12月5日付の《マナーうんちく話26 年賀状のマナー》を参考にして下さい。
喪中葉書の説明をする前に、「喪中」と「忌中」の違いをご理解いただきたいと思います。
日本史に詳しい方はご存知のことと思いますが、905年に後醍醐天皇の命により編纂され、967年より施行された「延喜式(エンギシキ)」という法典が有ります。飛鳥から平安時代を中心とした、人物、出来事、歴史、生活・文化、思想・宗教等の辞典だと認識していただいたらよいと思います。ちなみに旧文部省・大蔵省等という呼び名はその名残です。
その「延喜式」では、死の穢れの期間は49日と定めており、この期間を「忌中」といいます。そして忌中の人は、その期間中は他の人と触れあわない方がよいとされています。今でも、49日は、法要の最も大切な儀式になっています。
次に「喪中」とは、自主的に亡くなった人のために派手な事等を慎む期間のことです。喪中は1年間とされているようですが、地域のしきたりや文化等から生まれた風習で、統一規定も存在しないとおもいます。
このように「忌中」と「喪中」は大きな違いが有ります。
忌中期間は何かと束縛が多いですが、喪中になったら人付き合いを再開しなければなりません。従って「忌中」は年賀状を差し控えたほうがいいですが、「喪中」はこの限りではないと私は思っています。
但し、大切な人が無くなって49日以降でも、とても新年を寿ぐ気持ちにはなれない、心が癒されるのに、まだ時間が必要というような方は、年賀状は遠慮され、年が明けて「小寒」(24年は1月6日)に入ってから「寒中見舞い」を出されるのもいいですね。
このように、喪に服する期間も程度も故人により様々です。1年間は大好きな酒やタバコを断つのか、100日間は肉や魚を食べないのか、他人の祝い事にも関与しないのか、人により異なりますが、現代では、そのような人はあまり見かけません。
皆一様に1年間、年賀状だけ出さないというのもおかしな話ではないでしょうか?
さらに、故人の葬儀に参列して下さった方にも、丁寧に喪中葉書を出す人もいますが、これもどうかと思います。
なぜなら、葬儀に参列されたということは、亡くなられたという事実をすでにご存知だからです。喪中葉書は頂いてもあまり嬉しいものではなく、むしろ暗い気持ちになります。事実を知っている人に、再度喪中葉書を送り、暗い気持ちにする必要はないと思います。
また喪中葉書を頂いたら、故人との関係を考慮し、どうしてもお悔やみをしたかったら、頂いた時点ですればいいと思います。事前に遺族に予約し、故人の家にお悔やみに行くとか、香典を送るとか、手紙をしたためるとか、電話するとか、方法は様々です。お悔やみの必要がない場合は、松の内を過ぎて「寒中見舞い」を出すという手もあります。
また喪中の人に、それを知らずに年賀状を出したらどうするか?という質問をよく受けますが、不必要に気にされることはないと思います。喪中葉書は「年賀状の欠礼葉書」ともいわれます。欠礼とは礼を欠くことです。要は、「私の家は喪中なので年賀状を出すのを失礼させていただきます」という意味で、「年賀状を出さないで下さい!」ということではありません。但し、亡くなられた事実を知らずに年賀状を出したことと、一言お悔やみの言葉や思いやりの言葉を発してあげたら、相手も喜ばれると思います。
喪中葉書を「出す側」も「受け取る側」も、「忌中」と「喪中」の違いを理解し、故人との「思い」や「間柄」を考慮し、どのように対応するかを決められたらよいと思います。
そして、それを決めるのは、世間ではなく、自分自身で主体的に決めることが肝心です。