マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
【冠婚葬祭の知識とマナー29】 「食欲の秋」と「もったいない精神」
移ろいゆく季節がしっとりと感じられる今日この頃です。
スポーツの秋を身体で、芸術の秋を目で、そしてグルメの秋を舌でしっかりと堪能したいものですね。
さて、10月24日(月)は二十四節季の一つ「霜降(そうこう)」です。
霜が降るという意味です。岡山や倉敷等の県南では、霜が降るのはまだ先のことですが、県北の方では畑田に白いものが見えるようになります。
また、霜降を「しもふり」と読んだら、和牛を連想しますが、これは牛肉の脂肪があたかも大地に霜が降りたように見えるからです。
そして丁度この頃は、空気も澄み、巷には牛肉に限らず、美味しい食べ物が勢揃いし、まさに「天高く馬肥ゆる秋」となるわけです。
但し、肥えるのは馬だけにして頂き、皆様方は食べ過ぎに注意して「賢い食生活」を心掛けていただければと思います。
今回は食欲の秋にちなんで、「もったいない精神」のお話です。
今や死語になりかかっている「もったいない」を復活させた大の功労者は、先日亡くなられたケニアの元環境副大臣マータイ博士ではないでしょうか?
親日家として幾度も日本を訪れた彼女は、日本の「もったいない」に感銘を受け、この精神を国連で演説し世界に発信されました。
ところで、この「もったいない」の本来の意味は、「食べ物を粗末にしない」ことに由来します。さらに、単に粗末にしないだけではなく、「食べ物」や「料理を作ってくれた人」にも感謝する気持ちが込められています。
私はホテルで、レストラン・宴会・ブライダルの仕事を通じ長年「食」に携わってまいりました。その中で日本人は、世界に誇る素晴らしいモノを沢山持ちながらも、決して「ハッピーにはなれないなー」と感じていたことが幾つかあります。
その一つが、食べ残し、いわゆる食品廃棄物の量です。あまりにも多すぎます。勿体ない限りです。さらにこの廃棄物を処理するのに多大なエネルギーが必要になります。
「食べることは生きること」に繋がる最も大切なことですが、ここがだらしなければ、どんな素晴らしいことを言っても無意味だと思います。
食料自給率が先進諸国の中で最下位の日本が、世界屈指の「飽食の国」であり「美食の国」であることは、それは日本人のカイショウで素晴らしいことだと思います。
しかし、飢餓で亡くなる人や恒常的栄養失調に苦しんでいる人が世界中で大変多く存在する状況下で、食べ物を粗末にする行為は大変恥ずべき行為です。
日本人の排出する食品廃棄物の量の食べ物が有れば、地球上から飢餓が無くなるといわれております。
日本は食に関しての安心・安全にはとても敏感です。勿論このことを否定するつもりは有りません。しかし、それと共に「食べ方」にも、より気を配るべきだと痛感します。
ご馳走を腹いっぱい食べられることを感謝するとともに、地球上で飢えに苦しんでいる人達のことも少しは考えて、少しでも食べ残しを無くすよう心がけて頂きたいものです。
ついでに「賢い食べ方」もあわせてお勧めします。
食べ残しをせず、適量を、楽しく食すことです。
世界一長寿の国に住みながら、食べ過ぎ・飲みすぎて肥満になり、やがて生活習慣病になり、寿命を短くすることは、最ももったいないことだと思います。
今、循環型社会を目指し、猫も杓子も「3R」のリデュース、リユース、リサイクルを唱えていますが、其の元になるのは「勿体ない精神」です。
そして、その勿体ない精神の真髄は、「食べ物を粗末にしないこと」と「感謝の心」です。
グルメの秋にこそ、思い起こしたいことです。