マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
8月8日は二十四節季の一つ「立秋」です。
暦の上では秋ですが、実際には暑さがピークを迎える頃ですね。
この日から11月8日の「立冬」の前日までが「秋」ですが、残暑が厳しく、小さい秋を見つけるには、あとひと月くらいかかりそうです。
前回「攻めのマナー」をお勧めしましたが、暑中見舞いを出されてない方には、「残暑見舞い」を出されることをお勧めします。
文字通り、暑さが残っている時期のお見舞いになります。
そのポイントに触れておきます。
○残暑見舞いの時期
年賀状と違って明確な決まりは有りませんが、立秋から8月末頃が一般的です。
また、お中元を出せなかった場合も、「残暑見舞い」として、贈り物を贈られてもOKです。
○残暑見舞いの内容
「暦の上では秋になったのに、厳しい暑さが続いておりますね」などと、相手の体調を気遣うことが大切です。差出人の近況報告も明瞭簡潔に書いた方がいいですね。
よく、インターネットやマナーの本に例文が掲載されていますが、暑中の頃(二十四節季の小暑から大暑)や残暑の頃は、その年により、また地域により、太陽の照りつけ方、蝉の鳴き方、向日葵の咲き方、朝夕の涼しい風の吹き方等、情感の具合はかなり異なります。従って、表現方法はなるべく現状に即し、自分自身の言葉で書かれることがポイントです。そのためには、不必要に美辞麗句にとらわれることなく、素直な気持ちで語りかけることが大切です。
さらに、お中元を頂いたお礼を兼ねて出すこともあります。
○注意したい表現
残暑がいくら厳しくても、暑中見舞いのように「盛夏」「猛暑」等の表現はしません。
「立秋」「葉月」等がいいでしょう。
ちなみに8月は、葉の落ちる頃ですので「葉月」と言われます。諸説ありますが。
○暑中見舞いを出してない人から、残暑見舞いを頂いたら
先ず返事を出します。この時、残暑見舞いを頂いたお礼と残暑見舞いの挨拶を添えます。
今回の原発事故は、日本人に大きな教訓を残しました。
5-6年前までは、年賀状や暑中見舞い等は虚礼とされ、虚礼廃止が叫ばれる一方、いかに経済的な成功を収めるかが人生における大きな価値だとされてきました。
ホリエモンが時代の寵児ともてはやされた頃でした。
しかしその最先端を走っていた原発の安全神話はいとも簡単に崩れ、それを契機に、モノの豊かさや便利さばかりを追い求めていたのではハッピーになれないこと、そして日本人が古来より大切に育んできた「思いやりの心」等が再認識され始めました。
厳しい暑さが続く上に節電対策を余儀なくされる残暑の頃、普段はなかなか会う機会がない遠くの人や、忙しさのあまり何かと疎遠になっている家族・親族・友人等に、「どうすれば相手に喜んでもらえるか」、「どうすれば相手が心地よくなれるか」、常に相手の事を思い浮かべながら、僅か一枚のはがきに書きしたためる残暑見舞いは、思いやりの心がいっぱい詰まった最高の「涼の贈り物」です。
暑さ疲れが生じやすいこの時期だからこそ、前回お話しした「攻めのマナー」を発揮されてみては如何でしょうか?