マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
マナーうんちく話54《春分の日と墓参り》
3月21日は、彼岸の中日で、二十四節季の一つ「春分の日」でもあります。
この日は、昼と夜の長さが同じで、太陽が真東から登り真西に沈む日です。
昔、極楽浄土は西のかなたに存在すると思われていたので、太陽が真西に沈むこの日は、極楽浄土への願いが一番通じやすい日とされていたようです。
やがて室町時代に入ると、ご先祖様の供養もするようになり、お寺では「彼岸会(ひがんえ)」という方会(ほうえ)が営まれ、一般家庭ではお墓参りをする習慣が定着してきました。
またこの日は「秋分の日」と同じように祝日でもありますが、その趣旨は「自然をたたえ、生物をいつくしむとともに、祖先をうやまう」と法令に記されています。
今年のお彼岸、皆さまはどのように過ごされますか?
なにもかもあわただしい時代です。日頃はなかなかお墓参りが出来ない人も多いと思いますが、せめてお彼岸くらいは、家族揃ってお墓の掃除をして、ご先祖様と心の対話を図られてみられてはいかがでしょうか・・・。
「無縁社会」「孤の時代」などの由々しきキーワードが生まれ、家族や地域の絆の再構築が叫ばれる今日この頃ですが、「家族の絆づくり」には、お墓参りが最高です。
IT万能の時代だからこそ、お彼岸の存在意義を改めて思い起こしてみたいものです。
私は山から「ハナノキ(シキミ)」を切ってきて、それと共に自分で育てた菜の花を持参して墓参りを済ませてきました。
お墓参りに関しては、2010年9月21日「マナーうんちく話8」《彼岸と墓参りのマナー》を参考にして頂ければ幸いです。
ところで、お墓参りをされる時に、「ハナノキ(シキミ)」をお供えする方が多いと思いますが、以外にも、なぜハナノキか?ということを御存じない方も多いと思います。
そこで今回は「ハナノキ」に付いて触れてみます。
今後のお墓参りの参考にして頂ければ嬉しいです。
ハナノキはシキミ科の常緑木で高さは7-8メートルから10メートル位になります。一年を通じ緑の葉をつけ、比較的手に入り易いので、古来よりお墓や仏前にお供えしておりました。地方により「シキミ」「シキビ」「ハナエダ」ともいわれます。
独特の臭いがありますが、花も咲き実も付けます。
シキミの臭いは線香にも利用されたりするそうですが、私は小学・中学生の時に高梁川で鰻をとる「鰻カゴ」に利用していた記憶があります。シキミの臭いに誘われて、鰻がカゴの中に入ってくるということです。多分全国の色々な川でも同じような漁法は有ると思います。
さらにこのシキミの実には毒があります。かなり強い毒です。
この毒があるために、「悪しき実」と呼ばれ、それがやがて「シキミ」と言われるようになったゆえんだそうです。またこの有毒のシキミをお墓に供えることにより、野獣がお墓を荒らすのを防ぐという目的もあります。
また葬儀の際は、一枝だけ枕花として供え、末期の水を供ずる時は一葉のみ使用します。
ちなみに神道の神事に使用するのは「榊(サカキ)」で、これはツバキ科の常緑小高木で、神棚や祭壇にお供えします。古いお宅には神棚もありますが、当然そこにもお供えします。月に2度、1日と15日に取り換えるのが習わしです。
名前の由来は、一年を通じ常に緑の葉を絶やさないので「栄える木」が省略されて「サカキ」となった説と、神様と人との境だから「境の木」が「サカキ」になったという説があります。
私は以前、神前結婚式を担当していた時に巫女さんから、「サカキは常に緑が繁り成長が著しく早いから縁起が良いので神様にお供えする」ということを教えていただきました。
いずれにせよ、サカキは榊ですから「神様の木」そのものなのですね。
今回、仏事には「シキミ」、神道の神事には「サカキ」ということをご理解いただいたところで、次回は春の風物詩「お花見」のお話を予定しています。
こちらも意外に神様との関わりが深いようです。
さらに神様と縁の深い、日本人の「和の心」にも触れて行きたいと思っております。
ご期待下さい・