できることを積み重ねる・できないことはできない

井上博文

井上博文

テーマ:実は難しい研究計画作成方法

「不足系」の落とし穴

以前、ある人から相談を受けた時のこと。「うちの子はなんでできないのでしょうか?」との質問。何ができない、どの程度できない、という以前の問題で、この問いかけをしても、誰も回答はできませんし、できない原因を探しても、それを克服したらできるようになるという保証書があるわけでもありません。繰り返しになりますが、できないことに原因があったとしても、その原因を変えることで結果が変わるとは限らないのです。それだけ「できない」ということは複雑なもので、これにとらわれると、たいていの場合「努力不足」「力不足」などの不足系に逃げ込んでしまいます。多くのことに当てはまりますが、努力はした方がいいのは間違いありませんが、努力をしたことが、何でもできるようになるわけではありません。もちろん、努力をしたことで得られることはたくさんありますし、努力をしなかったことで得られないこともたくさんあります。しかし、それを言うと、キリがなくなります。私は陸上競技の努力はかなりしました。現役の最後の方は身体がボロボロで、強くなるために練習をしているのに、高齢者と闘ってもすぐに負けてしまいそうな自分の身体にがっかりしました。引退して半年くらいして、朝起きた時に、身体の痛みを気にせず身体を起こす自分に気付いて、「何が間違っていたのか」を自問自答しました。結局のところ方法が重要であって、がむしゃらな努力だけでは、かえって良くないという結論に当時は至りました。

できない理由を問うこと自体ナンセンス

「なぜできない」と問うのがナンセンスである理由は、あまりにもたくさんありますので、ここで全部言い切れません。大雑把なものを一つあげるとすれば、人間は、圧倒的にできないことが多いからです。まず人間では届かないことがあります。簡単に言えば飛べません。細かいところで言えばビタミンCも作れません。これは人間以外ならできる生物がいます。しかし、その生物から、「どうしてできないの?」と嘲笑的に言われた場合のことを考える人は意外に少ないと思います。人間は歴史的に、できないことを、できる範囲で克服するか、あるいは他にできることを(無意識的に)伸ばして、(意識的に)見つけて、できないことをコーティングするかの選択をしてきました。日本人は、自然を克服することはできないし、克服は無意味なことと考え(ヨーロッパの人は必ずしもそうでなかったようです)、例えば盆栽を作ったり、毎日庭に文様を入れてみたり、自然の土をこねて、われものの陶器を作ったりと、自然に無理なチャレンジをするのではなく、共存的に小さな抵抗をしてきたとも言えます。場合によってはいたずら心が見えるものもあります。作ってもすぐに消えたり、壊れることを無駄と思わず、むしろ尊いことと考えたと言えます。だからこそ、仏教の諸行無常や、一期一会などという言葉も浸透してきたのだと思います。
この本にでてくる「評論家君」(指摘はするけれど、結局何もしない)のようになるのではなく、「できることを惜しみなく、余さずする」ことが重要であり、そこに量の多寡はそれほど重要ではありません。当たり前と言えば当たり前ですが、「必要なことを必要な分だけ過不足なく」を常に考えておくことが重要なのです。なぜできない?と問うのはこの対極にあると言ってもいいでしょう。

「できない」のネジを外す

これから、必修の授業では、エラーチェックという項目をしており、それが終わったあと、「こんなことをしてはダメよ集」をやるのですが、その前の心構えとして、「できないのネジを外しておく」ということを言っています。「できないから」を理由にすると、ロシアやイスラエルのようなエラーのかたまりになってしまいます。彼らの頭はもう「撤退できない」「やめられない」「引けない」で席巻されており、理由は?となると、「相手が悪いから」「NATOが悪いから」「プライドが許さないから」などとあまりにもしょうもない理由で、何もしていない人を子どもまで虐殺しています。一番悪いのは、人殺しの頭の中です。
頭の中が「できない」で席巻されると、あまり良いことは起こりません。もちろん、「できないからこそ、できるまで努力する」というフレーズは美しく響きます。しかし、実際はそう思える人は希でり、その努力の仕方を教えてくれる人も滅多なことではいませんし、普遍的に通じる、できないことをできるようにするための努力方法を知っている人がいた場合、その人は歴史に名前を残す人かドラえもんでしょう。
重要なことは、自分が何ができるかを正確に知ることです。その「できること」に着目して、それに磨きをかけるか、あるいは、少しずつ新たなできることを増やしていくか、いずれにしても積み重ねが必要です。できることが増えると、いわゆる「引き出し」が増え、引き出しの多さと人の魅力は繋がっています。やはり何もできずに文句ばかり言う人と何でもできる人とでは魅力は全然違うと思います。誰でも最初から引き出しが多いはずはなく、徐々に増えるものです。また、できることが多ければ多いほど、あらゆる局面で手詰まりになりにくくなります。磨きあげたものをたくさん持つことは、非常に難しいことですが、まずはできることを積み重ねて増やしていくことから始めるのが良いでしょう。


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井上博文
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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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