看護系小論文の書き方概説

井上博文

井上博文

テーマ:社会人の看護学校受験

看護学校受験では小論文が問われることはよく知られています。当塾での相談や問い合わせも小論文に関することが多くなっています。小論文の出題は大きく分けて二種類です。テーマ型と課題文型です。どちらが回答しやすいかは一概には言えません。個人的には課題文の方が書きやすいのではないかと思っています。やはり、入試において小論文が問われるのは、推薦入試、社会人入試、編入の場合が多いです。小論文は多くの人が準備をせずに臨む傾向が強いですが、その分しっかり準備をしていると点数になりやすい科目でもあります。漠然と「何とかなるだろう」と考える人が多いのは面接と似ていますが、それは危険です。

小論文は情報提供

小論文対策と言われると、「書き方」にこだわる人が多いのですが、書き方は文字通り二の次です。小論文で問われるのは、文章の上手、下手ではなく、筆者の考え方の提示と、それを裏付ける「根拠」をもって主張を述べられるかどうかです。根拠とはつまり事実であり、事実とは情報であると言えます。つまり、情報をたくさん保有しており、それを適宜使えるように準備をしておくことが重要です。要するに情報提供意識を持っておくということです。情報提供のないものは小論文ではないと考えておいてちょうどいいくらいです。要は、読み手の採点官が「これはいい情報だ」と思ってくれればいいわけです。しかし、読み手も情報のプロです。そう簡単には納得はしてくれません。そこで、対策として、あげられるのは二つです。一つは、得意技を持つことです。これなら普通の人よりも情報を持っていると言える分野を作ることです。もう一つは幅広く様々な情報を仕入れることです。それぞれは浅いかもしれませんが、何でも知っているという状況を作ることです。そのために適切な参考文献は、小論文教材ではなく、「現代用語の基礎知識」系のこの国の論点をまとめたものは有益です。特に各記事が小論文になっていて、対立意見もあり、データファイルもあるものは小論文教材としては大変優れています。また小論文について対策を立てる時は、連鎖に思いを巡らせることが重要です。常に「じゃあどうなるか」を考えて連鎖が見えてくれば、一歩前進です。また連鎖のネットワークは大きければ大きいほど良いと言えます。

新聞などもはや誰も見ていない

ただし、この10年ほど、この国は異常かつ貧困かつ品性の低下した国になりさがってしまいました(これは私が知る海外の人、海外で活躍する日本人、国際的に活躍する日本人が言っていることです)ので、まっとうな議論の本が駆逐されてしまっています(これは私の見解です)。愚か者の政治禍を礼賛するような本を信じ込んでしまうと、不合格への道まっしぐらですので注意しましょう。
また、最新の時事問題の情報はよく知っておく必要があります。時事問題については、日常的に新聞やインターネットで情報収集をするのも良いでしょうし、スマホニュースアプリも複数見ると有用です。ただし、新聞は完全にオワコンです。かつての新聞の矜持などどこへやら・・私の知人の新聞記者は、ついに昨年で最後の一人もやめ、いなくなってしまいました。もううんざりだそうです。しばらくバイト生活ですが、それでも彼曰く右系の大(今はそうでもない)新聞社よりもはるかにマシだそうです。取材もできず、ネット情報を引用したり、平気で嘘を書いたり、権力者におもねったり、スポンサーのための情報媒体になりさがったりと、どうしようもない状態です。遠くない未来消滅するでしょうから、現時点でそれほど有効な媒体とは言えないでしょう。昔と違って、もはや小論文対策に新聞は不要ではないかと思っています。もちろん、テレビは論外です。信頼できる情報筋を若い人でも確保しておかないといけない時代で、まずそういうところが見られていると理解しておきましょう。今の大学の先生で、新聞が信頼できる情報筋だと思っている人の方が少ないと思います。昔は、大学の講師控え室に行くと、新聞が一通りあって、私もいつも読んでいましたが、常に、誰かが読んでいるので、新聞がヨレヨレになっていました。でも、今、講師控え室でスマホやPCでニュースを見ている人はたくさんいますが、新聞を見ている人など、見たことありません。

近年狙われやすいトピック

医療看護系で近年狙われやすいトピックを挙げます。
①グローバル
グローバルという言葉が一般に広まって久しいですが、当然、良い面と悪い面があります。コロナは私たちにグローバルの負の面を見せつけました。私たちは常に両方を意識しておく必要があるのですが、あまりそういった指摘はありません。忘れそうなTPPも良い面と悪い面があります。この種の問題が出たときには、いわゆるメリット、デメリットをたくさん言えるようにしておくことが必要です。これはかなり勉強が必要ですのでたくさん関連書を読みましょう。

②人口減少による影響、人口減少と少子化対策
人口が減少し始めて久しいですが、数年たちますが、いまだに人口が増える見込みがたっていません。今は不妊治療をする家庭も多く、決して子どもを持たないという選択をしている人ばかりではないのですが、非常に難しい問題になっています。何年も問われ続けた問題ですが、いまだに明確な方法は見当たりません。そして、年月は着実に進みますので
今となっては、すでに少子化世代が出産年齢に入っており、出生率の問題ともいえなくなっています。政治禍が、晩婚化が少子化の原因と言ったとか・・それにコメントする側も炎上しないように「確かに晩婚化は・・・」などと枕詞を入れて、毒にも薬にもならないことを言い、それをネットが取り上げて、そろそろ取り締まりをした方が望ましい、下品なコメント欄が騒ぐ・・・これが今のスタンダードですが、これは、中身はゼロで、結局少子化をどうすべきかを誰も語っていないし、結局原因は誰も知らないし、アホな政治禍は、自分たちの失政の問題ではなく、国民が悪いと言いつつ、従順な国民であることを確認して、メディア操作で従順でないものを下品なコメント欄等で叩き潰す・・
これは論ではありませんので、小論文では使えません。「異次元」の対策をすると、総理大臣が言ったそうですが、中身を見ておくことが重要です。本当にそれで子どもが増えるのか、増えない原因は何か、なぜ増やす必要があるのか、増えないと、社会保障制度はどうなるのか、遠からず、消費税(少子化対策に使えるらしい)を上げるのか、上げると、少子化対策に使われるのか???こんな問いかけは有効でしょう。
コロナ禍もあって出生率は1.4台からさらに低下しています。2021年は1.30です。こういった問題に取り組むために、周囲の出産年齢の人々にどういった環境なら子どもを産んで育てたいと思うかという声を集めておくと有効です。「男女共同参画社会の実現」といった
スローガンはもうほぼ意味をなしません。確実にこういった環境なら子どもを産みたいという生の声の方が小論では説得力があるでしょう。
③子どもの貧困対策
この国は残念ながらすでに「相対的貧困国」です。この10年の失政続きのせいと言っていいと思いますが、激しい格差社会をさらに後押しするような政策が続きます。それに伴いいくら働けども貧困になっていく人が少なくありません。もちろん給料もあがっていません。これはたくさんデータがあります。また物価上昇の連鎖が追い打ちをかけています。その中で、ヤングケアラーという言葉が話題になりましたが、子どもの貧困が社会問題になっています。
④いじめ防止対策法
いじめ問題はこの30年なくなったことはありません。戦争はいけないという人は結構多いのですが、同じ人がいじめ問題に取り組むということはあまり聞いたことがありません。いじめられている子どもからすれば、極限状態ですので、戦争や紛争で犠牲になっている子どもと恐怖度合いはそれほど変わらないと考えて良いと思います。集団的自衛権反対とデモ行進をしたり、ソーシャルメディアで声をあげる人は、是非、いじめ問題が生じた学校周辺でもデモ行進をしてもらいたいものです。子どもの生の苦しみに眼差しを向けることは大切なことです。
⑤高齢化社会
今は少子高齢化とは言わなくなりつつあります。別の問題と捉えるのが妥当です。テレビのコメンテーターで高齢者は集団自決すべきであるというようなことを言った人がいるそうです。何らかの文脈があるにせよ、怖い人がいるものです。しかし、高齢化は進むでしょうし、私だって、遠からず高齢者になる予定です。高齢の基準も上がってきているように思えます。だからこそ、健康と併せて考える必要もあり、健康寿命などという言葉も重視されています。
⑥臓器移植関連
たぶんコロナのせいだと思いますが、最近「臓器移植問題」の出題が減っていると思います。2009年にいわゆる「臓器移植法」が改正されてしばらくはよく出題されていました。出題された場合、テクニックを一つあげるならば、看護師及び医療従事者は臓器移植について否定をしないことです。すでに1997年以来法律で定められ、改正されてもいるわけですから、法的には定着しているわけです。問題がたくさんあることと、否定することは意味が異なります。安易な否定は避けましょう。また臓器移植には、生体移植と脳死移植があります。どちらも重要ですので、知識を仕入れておく必要があります。脳死移植の方がインパクトが強いのですが、政治家が子どもから肝臓移植を受けた記事が出題されたこともあります。もちろん脳死も関連問題として重要です。何をもって人の死とするかについて、我々は一定の基準を持たねばならない時代です。

⑦環境問題
これは近年増えています。とくに最近はロシアの侵略戦争のせいで、環境にも大きな影響が生じています。以前は地球温暖化について日本は大騒ぎでしたが、実は二酸化炭素の排出と地球温暖化を真面目に結びつけている国はほとんどありません。また中国やアメリカなど二酸化炭素を減らす気などさらさらない国もあります。特にアメリカの前大統領は徹底していました。
日本も原発事故以降、SDGSという言葉も手伝って、方向転換をせまられていますが、遅々としたものになっています。
⑧エネルギー問題
これもロシアの暴発から今大きなトピックになっています。シェールガスって最近あまり言われなくなりました。太陽電池なのか風力や地熱なのか、それともやはり原子力なのか。エネルギーに関する選択肢はこれからの私たちの生活に直結しますので、無関心であることはあってはならないことです。ただ、何となく原子力反対もよくないと思います。賛成はもっとよくないと思いますが。原子力に関して否定的立場を取るなら、どこがどうよくないか。この点について言及することが必須です。私たちは今までさんざん原子力に頼ってきたのは事実です。その反省という観点が必要になるはずです。今まで、どのくらいの割合で原子力を使ってきたか。そしてどのくらいの年数で、何のエネルギーを増やし、原子力の代わりにするか。コストはかかっても我慢できるか。我慢してでも原子力や炭素系燃料を避けるか。課題だらけなのです。これに答える用意をしておくことが必要です。
 
以上、長々と書きましたが、これらは単発というよりはつながった問題として捉えることが重要です。また医療看護系は、小論文でも適性が見られますので、倫理観も重要です。あわせて考えておきましょう。


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井上博文
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株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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