公認心理師や臨床心理士養成大学院の受験でなぜ英語が必要なのですか?
社会人の方が臨床心理士指定大学院受験の勉強を始める際に弱点と考えがちなのが英語です。社会人の方はどちらかというと英語を回避できる入試を探す傾向が強いと思います。誰でも未知の分野に進むときはできるだけ具体的な情報が欲しいと思うものです。しかし、英語については、果たして未知の分野かどうかは微妙なところがあります。私がこれまで先生方の話を聞いてきた中でも、英語に対する考え方は様々で、普通の英語が読めるならそれでいい、という先生もおられますし、いわゆる専門的な英語、臨床心理学なら、いわゆる心理英語が読めねばならないと考える先生もおられます。しかし、英語を回避できる入試は社会人といえどもほとんどありません。関西圏では三校ほどです。立命館大学大学院や京都文教大学大学院ですが、英語がない方が合格しやすいかというと決してそんなことはありません。英語がない分、面接や専門科目の方が対応が難しくなります。研究計画も相応のものができていなければ、合格には届きません。私はその意味であまり英語回避の受験勉強をおすすめしません。また、それなりに英語ができる人には英語を課す受験をおすすめしています。もちろん、その方が受験の幅が広がるからです。また、多くの大学の先生が、英語ができる学生をとりたいと言います。理由は様々ありますが、臨床心理学が英語で生まれ、発展している学問分野であることが一番の理由で、その次はやはり、大学院である以上、二つ以上の外国語を駆使できることが普通であると考えている先生が多いということが一般的だと思います。
現代では、どのような学問分野でも英語が駆使できることが前提となっている場合が大半です。学会レベルの話になると、日本人同士でも普通に英語でやりとりをすることも珍しくはありません。というわけで、社会人の方も英語を学ぶことがおすすめされるわけですが、受験勉強に絞って考えた場合、どこから始めたら良いかという質問をよく受けます。
よく『ヒルガード』を読むと、心理学と英語が同時に勉強ができて一石二鳥であるという声も聞きます。これは和訳もあるので、便利と言えばそうですが、社会人の方がここから始めるのは、私はおすすめできません。『ヒルガード』についてはある程度心理学の経験を積んだ人が読む方が効果が出せるのではないかと思いますし、一人で読むよりは、心理学の指導者を入れて、複数で読むとより効果があると思います。ただし、それは心理学の勉強という観点になります。私の印象論としては、これは英語の勉強にはあまりすすめられないと考えています。正直、英語のグレードに差があり、きれいな英語と明らかにおかしい英語が混在しており、和訳本も訳に困っていると思わされる箇所が少なからず(かなりたくさん)あります。
社会人の方の英語の勉強のスタートは、まずは今の自分を知るという意味でも単語帳に長文のついているものをどんどん訳していくのがおすすめです。私がとりあえずおすすめするのは『速読英単語必修編』(Z会)で70ほど長文がありますので、2週間で1周訳してしまうくらいの勢いが妥当です。できれば3周くらいしてから、状態を見て、次の手を打つのが良いでしょう。次の手はたくさんありますが、過去問はしばらく不要です。まずは普通の英語を滞りなく、止まることなく読めるように練習することが優先です。当塾では、授業以外で個別で読み合わせをして、普通の英語が読める訓練を繰り返します。いわゆる心理英語と過去問は最終調整で、読めば良いものですが普通の英語が読めれば、十分合格点には届きます。心理学のキーワードを覚える訓練は専門科目の勉強でするはずですので、その際に例えばattachment(愛着)を「付着」などと訳されると厳しいですが、「アタッチメント」とカタカナで訳すことも間違いではありません。それができるようになるのは、心理英語とやらに慣れることよりも、普通の英語が読めて、文脈がとれるならば、かりに「愛着」が出てこなくても、十分対処ができるはずです。infantも必須ですが、生まれて間もない赤ちゃんから、言語獲得くらいの子どもは全部infantになり得ます。「幼児」だけだと文脈をそこねます。まずは普通の英語を読めるようになるとは、文脈からinfantの意味を読み取ることです。単語とにらめっこをしても、まずわかることはありません。文脈を取れるように意識しましょう。
他にもトータルで見て、おすすめしている教材は『心理学論文道場―基礎から始める英語論文執筆』(世界思想社)です。
私は、受験指導というカテゴリーに属しますので、その観点からすると、基本的に普通の英語が読めることの方が重要だと考える方です。その中でも、あまり難しい単語に注目するというよりは、どちらかというと、以前紹介したベーシックイングリッシュのような単語を覚えることをすすめています。例えば
the words, especially those that are old in the language, are・・・
こんな文があったとします。おそらく単語は難しくないのですが、何とも読みにくいと思います。そのまま直訳すると「単語、特に単語、その単語は言語の中で古い・・」・・・・正確に訳すと、「単語、特に言語の中で古いものは・・・」とみるのが妥当でしょう。難しい単語を覚えるのも大事なのですが、こういった文に出るような、特に難しくもない単語の羅列を確実に読めることの方が重要だと私は考えています。
英語の教材の数は無数にあります。この中から「最も良いもの」を探すのは至難の技です。
だからあまり気にせず適当に…と言いたいところですが、そうもいきませんので、ある程度絞って入手したいところです。
特にここでは、初級者やブランクのある方に適しているであろう方法に絞ります。一つは歴史のあるものです。私たちが受験生だったころ、『試験にでる英単語』という名作がありました。ある意味カリスマ的な一冊で、ほぼ全員が持っていました。私たちはこれを「シケタン」と略していました。「デルタン」という略語もあるようです。書名に略称がつくことはめったにないでしょうから、これはすごいことです。このような本はある程度は今も使えると思います。実際、著者の先生はなくなって久しいですが、いまだに書店に並んでいます。しかもCDつきになってバージョンアップまでしています。今あらためて内容を見ても、いい単語が並んでいるなと感心させられます。しかもこの本は今のようにコンピューター処理されていませんので、著者の見識の高さもみえます。また、TOEICなどのテスト対策をお考えの方は、また少し違った選択基準が必要です。 周知の通り、これらの本は膨大に出版されていますので、どれを選べばよいかわからないと思います。この場合は、適切な目標設定が問われます。たとえばTOEICを受験するかどうか、あるいは大学編入でスコア提出を求めてくる大学があるので、それに対応するか、留学したいかなどの目標です。それによって取るべき必要最低限のスコアが変わってきますので、よく考える必要があります。ポイントはリスニングをどの程度鍛えるかだろうと思います。しかし、よくも悪くも、大学院受験や編入ではリスニングはあまり問われませんので、長文読解にウエイトが乗ります。もし、そうであれば、それに適した教材を選ぶ必要があります。総合的に見て、アルクが出す教材はそれなりの完成度かと思います。また、いわゆる過去問は、受験する大学の問題だけにこだわらないのであるならば、良い教材と言えます。ただ、回答や基準が明示されませんので、使いにくいという印象を持つ人が多いと思います。当塾では、過去問は授業外で、生徒と教員が一緒に読み合わせをしています。それである程度読む基準ができると思いますので、その意味で有用な教材になっています。
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