あらためて公認心理師試験対策勉強法
もうすぐ第4回公認心理師試験の過去問詳解が出ます。
第3回の過去問詳解も含めて、過去問詳解は、試験勉強には非常に有益ですので、是非ご利用いただけたらと思います。この本の特徴として、正答率があります。正答率が低いものは、やはり難易度が高いと言えます。ここでは正答率が20%未満の問題を見ます。
選択肢が難しい問題
問84 正答率19.3%
問84学習の生物的制約を示した実験の例として、最も適切なものを1つ選べ。
①E. L. Thorndikeが行ったネコの試行錯誤学習の実験
②H. F. Harlowが行ったアカゲザルの学習セットの実験
③J. Garciaらが行ったラットの味覚嫌悪学習の実験
④M. E. P. Seligmanらが行ったイヌの学習性無力感の実験
⑤W. Köhlerが行ったチンパンジーの洞察学習の実験
正答は③
『過去問詳解』によると、
「学習の生物的制約とは,古典的条件づけ,オペラント条件づけ,観察学習において,学習しやすい刺激や反応は生得的にある程度決まっていることを指す。」
まず、これがわからないと、なかなか回答が難しい問題になります。④を選んだ人が41.6%でした。
それぞれの選択肢の知識も重要ですので、勉強しておかねばなりません。
③の解説は以下の通りです。
味覚嫌悪条件づけは古典的条件づけに含まれる。これはガルシア効果とも呼ばれ,J. Garciaらによって提唱された。この条件づけの特徴は他の古典的条件づけと異なり,小数回での対呈示で形成が可能であることや条件刺激と無条件反応との間に時間的隔たりがあっても成立することである。例えば,初めて食べた生カキで食あたりを起こし,その後,生カキの匂いを嗅ぐと気持ち悪くなるようになったというような場合,生カキに含まれる菌や毒物(無条件刺激)が食あたりによる不快感を引き起こし(無条件反応),生カキの風味(条件刺激)が不快感を引き起こしている(条件反応)。
私の感覚ではかなりの難問です。それぞれの選択肢の知識が少しある程度では、この問題の正答を選ぶのは容易ではありません。といって、捨てても良い問題では決してありません。深く勉強しておきたいトピックです。
専門知識系
問96Clinical Dementia Rating〈CDR〉について、正しいものを1つ選べ。
①介護必要度に関する評価はしない。
②質問調査による他者評価尺度である。
③健常と認知症の境界は、0.5点である。
④判定には、家族からの情報は考慮されない。
⑤人の見当識障害は、中等度障害と判定される。
Dementiaが来た段階で「また高齢者に関係するの問題」と反応してしまいますが、ブループリントの変更点を見ても、相変わらず高齢者や認知症の問題が出ることを想定せずにはいられません。じゃあ、CDRってわかるのか、って言われると、残念ながらわかりませんでした。正答は③で8.9%でした。これは②を回答した人が62.7%でしたので、引っかけがあったのかもしれません。過去問詳解によると、
Clinical Dementia Rating〈CDR〉とは,認知症の重要度を評価するための検査である。実施は,対象者本人に面接をして評価することと,対象者の生活を詳細に把握している介護者や対象者家族からの聴取によって評価することが可能である。得られた情報を「記憶」「見当識」「判断力と問題解決」「社会適応」「家庭状況および趣味」「介護状況」の6つの項目に応じて評価していく。この6つ目の「介護状況」が介護の必要度を評価する項目である。
とのことです。ですから②で言う質問紙ではなく面接で評価するので、②は不正解になります。
③以下の解説は過去問詳解に詳しく書かれています。
高齢者関係の問題はたくさん出ると、このコラムで言いながら、私には「認知症の検査」であることしかわかりませんでした。かなりつっこんだところまで勉強しておかないといけない典型ですし、これだけ問われやすい分野である以上、捨てるわけにもいきません。しっかり勉強しておきたいところです。
問13摂食行動を制御する分子について、正しいものを1つ選べ。
①グレリンは、食欲を制御する。
②レプチンは、食欲を促進する。
③オレキシンは、食欲を制御する。
④肥満症では、血液中のグレリン濃度が上昇する。
⑤肥満症では、血液中のレプチン濃度が上昇する。
正答は⑤です。正答率は10.7%です。むしろ、10%も合わせられる人がいるのがすごいなぁと思いました。私はもちろん、手も足もでませんでした。これは専門知識がないと厳しいです。とりあえず、グレリンとレプチンは③以外で出るので、③を外しました(良い方法ではありませんが、手も足も出ない時の悪あがきとして)。④と⑤は知識がなければ判断できませんから、①と②に注目し、「摂食行動を制御する分子」という問題文と照合して、④と⑤の「濃度が上昇する」という言葉に賭けて「制御したら濃度は上昇しないよな?」と考え、グレリンを外しました。あとは②と⑤は気合いと根性で②を選び、はい、終了・・・でした。レプチンまで突き止めたのですが・・・
皆さんは、こんなことをしないでください(これでも結構当たるのですが・・)。
以上の私の推測は、単なる悪あがきで時間の無駄でしたが、本試験では、つい、何とかなるかも、と挑んでしまいます。私のように試験的に受ける人間は、睡眠薬を答えろ、といった明らかに絶望的な問題でなければ、挑んだ方が、話題になるかと思って、つい挑んでしまい、時間を浪費したなと反省しています。「肥満症」と見てしまうと、クレッチマーとか類型論とか、生兵法知識が頭を駆け巡り、あきらめを悪くして、時間を無駄にしてしまいます。これは、グレリンやレプチンの正確な知識がないと回答が難しい問題です。
レプチンは、過去問詳解によれば、
レプチンとは,146アミノ酸残基から構成されるたんぱく質である。これは脂肪細胞から分泌され,食欲抑制やエネルギー消費促進を介して体脂肪量の調節を司るため,食欲を促進するという。
ヒトの血中レプチン濃度はBMIや体脂肪率と正の相関を示すため,BMIや体脂肪率の高い肥満症では血液中のレプチン濃度が上昇する。よって,本選択肢は正しい。レプチンは食欲を抑制するため,通常であればレプチンの増加によって体脂肪量が低下するよう調節されるが,肥満症においては,視床下部のレプチンレセプター,あるいはそれ以後の伝達経路に問題が生じているため,レプチンが多量に分泌されても食欲が抑制されず肥満になると考えられている。
やはり難問です。摂食行動はブループリントに出ていますが、それだけでこの問題にたどり着くのはなかなか困難です。
問103大脳皮質運動関連領域について、正しいものを1つ選べ。
①運動前野は、運動に対する欲求に関わる。
②補足運動野は、運動の準備や計画に関わる。
③一次運動野は、体幹や四肢の平衡の維持に関わる。
④一次運動野は、Brodmannの6野に位置している。
⑤一次運動野が障害されると、同側の対応する筋に麻痺が生じる。
正答は②で、正答率は12%でした。
この問題は、大脳の問題としては基本的な問題なのだそうです。しかし、この正答率の低さは、基本的にこの種の分野をあきらめている人が多いということを意味していると考えられます。脳に関係する問題は必ず出るでしょうから、基本的なことは勉強をしておいた方がいいのは間違いはないのですが、私個人として、正直に言えば、残り時間を考えると優先順位は低いと思います。9月試験を思い、現時点で全く知識がないなら、この種の問題はハードルが高すぎるのではないかと思います。
過去問詳解によれば、大脳の表面は厚さ3mm程度の大脳皮質という灰白質,すなわちニューロンの細胞が凝集した組織であり,ヒトの知的活動を支える重要な部位である。大脳皮質の大きな特徴は領域ごとに異なる機能を担っていることであり(機能局在),その各領域は「野」と呼ばれる。大脳皮質を機能面で大きく分類すると,運動野,感覚野,視覚野,聴覚野,それ以外の連合野に分けられる。運動を司る運動野は前頭葉の後部に位置しており,一次運動野と高次運動野の2領域から成る。また高次運動野は運動前野と補足運動野に分けられる。私たちが複雑な運動をする際には,適切な運動を準備する高次運動野と運動の実行を指令する一次運動野が協調して働いている。
となっています。正答②の解説は、
②正しい。補足運動野は自発的に一連の運動を順序立てプログラムする機能や,運動機能を担う。
となっています。
みんなが嫌がる統計問題
問7統計的仮説検定の説明として、正しいものを1つ選べ。
①t検定では、自由度が大きいほど、帰無仮説の上側確率に基づく棄却の限界値は小さい。
②2つの条件の平均に有意な差が認められない場合、それらの平均には差がないといえる。
③K. Pearsonの相関係数が0.1%水準で有意であった場合、2つの変数間に強い相関があるといえる。
④対応のない2群のt検定では、各群の標準偏差が大きいほど、有意な差があるという結果が生じやすい。
⑤K. Pearsonの相関係数の有意性検定では、サンプルサイズが小さいほど、帰無仮説の上側確率に基づく棄却の限界値は小さい。
正答は①で、正答率はなんと8.4%。ちなみに②選択率が24.4%、③25%、④24.8、⑤17.0%で、見事に割れました。みんなわからなかったのですね。と安心したいところなのですが、こういった問題が確証をもってわかることはとても大切なことです。このあたりの知識があると、臨床心理士指定大学院受験にも役に立ちます。
過去問詳解の解説はとても充実していますので、是非お読みいただければと思います。
ここまで4回正答率20%未満の問題を紹介してきましたが、模擬試験の結果分析でも同じ事が言えるのですが、統計、医療系、福祉系の問題は正答率が低いのは間違いありません。
⑤ 心理学における研究 約 2%
⑥ 心理学に関する実験 約 2%
⑩ 脳・神経の働き 約 2%
⑰ 福祉に関する心理学 約 9%
㉑ 人体の構造と機能及び疾病 約 4%
㉒ 精神疾患とその治療 約 5%
関係行政論などもありますので、これだけにとどまるわけではありませんし、割合も必ずしもこのまま出るわけではありませんが、合計すると、24%になります。ほぼ4分の1です。230点満点で見ると、55点分です。残りが175点、最低点が138点とすると、37点しか落とせなくなります。やはり全部捨てるわけにはいきませんし、気合いと根性と運に任せるのもよくありません。ここから何点捻出できるかは、考えておくべきでしょう。
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