「日本の「東大王」型エリートが、なぜか海外では通用しない本当の理由」を読んで

井上博文

井上博文

テーマ:思考方法

表題の記事を読みました。
こちら
正直「うーん」と言ったところで、私自身、必修の授業の中で「考え方」について年中言っていますので、思うところはたくさんあります。よくわからないので、記事を何度か読み返したのですが、どうも日本の大学を批判しているわけではなさそうです。高校が詰め込み型で、イギリスとは違うということで、イギリスは考える力を身につけさせる高校教育だということのように読めます。また、日本はクイズ王的に知識が豊富な人が認められる傾向にあるというようにも読めます。

特に反対とか批判があるわけではないのですが、日本人の大学生が考える力が低いのは確かにあると思います。ただ、知識が豊富かといわれると、それもまた違うかと思います。私は何度も言ってきたことですが、受験の体制とシューカツシステムが諸悪の根源であって、教育そのものは、それほど諸外国と比べて劣っているとは思っていません。

いわゆる受験英語批判は強いですが、必要に迫られると、人はわりと勝手に覚えます。日本人が英語力が高くないのは、日常生活にあまり必要性を感じないからに他なりません。たとえばスウェーデンは、家の中ではスウェーデン語で話しますが、外では英語を使うことが多いそうです。国全体がそういう仕組みになっているからです。日常目に触れるもののほとんどが英語ならば、嫌でも覚えますが、そこまでして国民全体を英語圏にしたいという意思を誰からも感じたことはありません。だから、英語を身につけたい人は、自力で身につけざるを得ないのです。学校教育だけで、ペラペラになれる国など、私の知識にはありません。

いわゆる思考力も、小学校から高校までの学校で身につけられるかと言うと、人によると思いますし、学校教育では難しいと思います。いわゆるアクティブラーニングには、私は懐疑的です。思考力を身につけさせる方法の定式は存在しませんから、それこそ指導者がかなりの思考力を持った人でないと何もなりません。しかし、適材指導者をスクリーニングする方法がありません。アクティブラーニングをしたことも、できたこともない指導者がアクティブラーニングを推奨するのと、英語を話しこともなく、受験以外で必要性を感じたことのない人間が、日本人の英語力を云々するのは、酒場で、プロ野球を語る酔っ払いと同じ構造なのです。

真剣に日本人の英語力を高めたり、思考力を高めたいと思うならば、まずは必要性を高めることから始めねばなりません。ただし、少なくとも思考力の強化は、かなり難しいものです。上っ面のアクティブラーニングなど、寝言の中の戯言にすぎません。海外で、いわゆるエリート教育が行う思考力トレーニングは、ほとんどにおいて能力的強者と弱者にわかれ、弱者は強者の引き立て役として機能させられることになり、それを「自分を知る」と位置づけられます。確かにそれを知るには思考力が必要です。誰もが主人公になれると思うと大間違いで、エリートを作る同じ場所に、その数倍のスケープゴートを作る覚悟が必要です。スケープゴートの親たちに敢然と、「あなたのご子息はエリートの肥やしです」と笑顔で言える教師が、本物の教師と呼ばれる環境を素晴らしいと思うなら、是非頑張ってくださいと言いたいところですが、私は御免蒙ります。

ちょっと生々しく書きましたが、どこの国とは言いませんが、記事の国の誇張なしです。


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井上博文
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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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