公認心理師試験 平成31年度版ブループリントが出ました ①
第1回公認心理師試験は、2018年9月9日と12月16日の2回、第2回公認心理師試験は2019年8月4日に行われましたので、過去問が3つあることになります。まだ第3回の延期日程は発表されていませんが、当然、過去問で勉強しようという人は増えますし、まずは過去問を見ようという人もいると思います。しかし、一般に過去問は、最も出にくい問題ですし、公認心理師試験の幅の広さを考えると、過去問だけの勉強は危険です。しかし、公認心理師試験については、まだ情報の蓄積が少ないため、過去問は有効な勉強手段です。私たちとしては、12月16日試験と第2回試験の解説を作っていますので、是非お読みいただきたいと思っています。かなり完成度は高いと自負していますので、勉強を始める方はまず手にとっていただけたらと思います。これらを読んでいるとよくわかるのですが、一つの問題のキーワードからいくらでも問題を作ることが可能なものがたくさんあるということです。例えば
北海道試験の問24
記憶について、正しいものを1つ選べ。という問題です。例えば「短期記憶について」などと絞り込まれていると、比較的回答はしやすいと思いますが、このように漠然とした問題は、選択肢への対応がすべてになりますので、時間もかかりますし、合否への影響が大きい問題と言えますし、これからも何らかの形で問われることが多いと予測されます。出題者側が問いたいことが何かを知る手がかりになります。
選択肢は以下の通りです。難問です。現任者講習のテキストには、1ページ程度でさらりと記憶の種類が列挙されているのみですが、重要なキーワードはあがっていますので、より詳細な教材で勉強する必要があります。
①エピソード記憶は反復によって記憶される。
② 長期記憶の保持には側頭葉や間脳が関わる。
③ 短期記憶は一次記憶とも呼ばれ、数時間保持される。
④ 運動技能や習慣などに関する記憶は意味記憶と呼ばれる。
⑤ 自分の名前のように生涯保持される記憶は二次記憶と呼ばれる。
①エピソード記憶は長期記憶ですので、反復によるものは短期記憶にとどめておくだけであるため、違うでしょう。エピソードを反復するのは大変かもしれません。
②正解はこれです。
当塾の解説を見ると、
間脳・大脳辺縁系の病変による軸性健忘ではエピソード記憶(思い出)が時間的に逆行して忘却され、コルサコフ症候群や個人生活史の健忘などを生じるが、数字列復唱などの即時記憶は保たれている(加藤敏他編 (2016) 現代精神医学事典 p.189 弘文堂)。脳損傷による永続的な全般的記憶障害を健忘と呼ぶ。健忘患者は主に側頭葉内部損傷(海馬や扁桃体)、もしくは間脳(視床や乳頭体)損傷をもつことが分かっている。前者を側頭葉内側部健忘、後者を間脳性健忘という(岡田隆他著 (2015) 生理心理学 第2版 p.66 サイエンス社)。
とありました。これは専門知識がないと難しいです。
③これは、現任者講習のテキストにもありましたが、短期記憶は、その保持時間は約15~30秒間となっていますので、違います一次記憶は正しいです。
④意味記憶は長期記憶になります。現任者講習のテキストには、宣言的記憶の下位分類にエピソード記憶とエピソードを伴わない意味記憶に分類されるとあります。
また、非宣言的記憶には技能・習慣が含まれます。したがって、違います。
⑤二次記憶とは、すでに意識から遠ざかっている記憶で、その内容自身に加えて、以前に経験したり考えたことがあるという意識を伴うものをいう( 心理学辞典 有斐閣)。とのことですので、名前が意識から遠ざかるのも少し困りますので、違うとみて良いでしょう。
②は専門知識を要するものですので、難しい上、消去法では解ききれない問題です。現任者講習テキストでは対応しきれていませんので、複数の書物を見ておく必要があります。このように一つの問題からネットワークを広げていく作業をすることで、より効果的な勉強になると言えます。
事例対策については繰り返しになりますが、事例問題は概ね7割程度取れる問題です。逆から言えばそれ以下だと合格に影響しますし、それ以上取るのはそれほど簡単ではありません。確実に7割取ることを考えましょう。それには一定の練習が必要です。また、複合的知識が問われる問題もありますので、その点も意識しておくべきでしょう。
北海道試験問60
28歳の女性A。バスで通勤中、突然、激しい動機と息苦しさに襲われ、強い不安を感じた。途中のバス停で降りてしばらく休んでいたら、落ち着いたので、その日は会社を欠勤し帰宅した。その後、繰り返し同じ発作に見舞われ、また発作が起こるのではと不安が強くなった。バスに乗るのが怖くなり、家族に車で送ってもらわないと出勤できなくなった。やがて外出することも困難となったため、医師の紹介で相談室を訪れた。Aに対する認知行動療法として、最も適切なものを1つ選べ。
① イメージは用いず、現実的な状況を段階的に経験させる。
② 不安な気持ちに共感し、安全な行動をとるようにさせる。
③ 一人での練習は危険を伴うため、ホームワークは用いない。
④ 発作の前兆である身体症状を意図的に作り出し、経験させる。
⑤ より機能的な考え方に修正できるよう、リラクセーション法は用いない。
まずキーワードは「通勤中の動機と息切れ」「強い不安」「発作の繰り返し」「やがて出勤、外出できなくなった」「医師の紹介(主治医がいる)」「認知行動療法」
このくらいになります。
瞬時にわかるのは②は違います。認知が関係ありません。③も違います。ホームワークは使います。⑤機能的な考え方に修正するのはいいのですが、リラクセーション法を用いない根拠にはなりません。①と④が残るのですが、ちょっと難しかったです。④は暴露ですので、認知行動療法にはこれはあります。ただ、身体症状を作り出せるのかどうかちょっとひっかかります。①のイメージを使わないがひっかかります。使わないということことはないようです。系統的脱感作法というものがあります。ということで①は違うと見てよいでしょう。④が正答ということになります。公認心理師過去問詳解 2018年12月16日試験完全解説版によれば、正答率は36.8%でした。ちなみに①を選んだ人は43.1%でしたので、私だけでなく、皆さんこの二つで迷ったということだと思われます。
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