僧侶のインターネット宅配

井上博文

井上博文

テーマ:仏教

大学院や編入と関係のない話ですが、昨夜、仏教系研究会の忘年会をして、頭が仏教(?)ですので、ちょっと気になる記事を見つけてしまいました。
こちらこちら
要するにネットで僧侶の派遣を発注して、アマゾンなどの企業がそれを行うというものです。これを読んだ瞬間、「とんでもない」「これぞ末法か」と思ったのですが、同時に「でもどこが問題点?」と疑問にも思いました。記事には「仏教界から「宗教行為を商品化している」との批判が上がった」と書いてありましたが、それを言い出したら、桜や紅葉で拝観料を取っているのは商品化していないのか、と当然言われてしまうでしょう。宗教的グッズを作って(おみくじなど)、それを売り出すのは、商品化以外何者でもありません。そりゃ、こういったことを考える人がいてもおかしくないでしょう・・と思わざるを得なくなってしまいました。宗教行為を商品化することを是としないことは、多分正しいのですが、実質そうはなっていないということを、仏教者はあらためて考えないといけない時に来ています。
同時に内田樹氏のブログの大学教育の終焉という記事を見ました。「手続き型合理性」「反知性主義」「人間は金で動く」「上に無批判に従う人間」「金で動く人間」「ことの理非の判断に際して自分の知性を使わない人間」こんなキーワードが突き刺さりましたが、案外、この僧侶のインターネット宅配問題もこのキーワードで説明できるのではないかと思いました。


こんな本もあるように仏教界への批判は昔からあります。しかし、仏教界から明確な反論がほとんどないのです。もちろん、鈴木隆泰先生のように一線の学者が『葬式仏教正当論』という書籍もあります。

仏典を根拠にそれを証明しようとした、極めて目的が明確な書籍です。しかし、これはむしろ例外的であり、たいていの場合において、仏教者から、一般に向けて、言葉を尽くして何が正しいのか、ということを説明していないと思います。だから「お布施●●万円です」と言わずとも、「志」という形になって、暗黙の了解のみを頼りに、僧侶が動いてしまうと、まさに「ことの理非の判断に際して自分の知性を使わない人間」になてしまうのです。実際、僧侶が依頼を受けて、葬儀の場に行って、一律3万5000円という金額が通ってしまったわけです。こういった僧侶の行為を具体的にどこがどうおかしくて、どうすべきであるのか、という問題に対して、誰も議論をしてこなかったのではないかと思います。不適切かもしれませんが、私が一番問題だと思ったのは、「仏教界」のコメントです。「全日本仏教会の斎藤明聖理事長は24日、「宗教行為をサービスとして商品にしている」と批判する談話を発表した」と記事にありましたが、「商品にすべきでない」のは誰でもわかります。しかし、それに乗っかる僧侶はたくさんいるわけで、そういった流れを「止められない」のか「黙認する」のか「否定する(もちろん根拠付き)」のか、何ら立場が示されていません。私の先輩筋にあたる釈徹宗先生は
「何に対してもコストを抑えてより良いサービスを受けたい現代人の体質が現れている。運営に苦しむお寺が多く、派遣を望む僧侶もいるのだろうが、結局は「僧侶不要」の流れに拍車が掛かる。僧侶は「人に来てもらいたい」という強い志を持って仏道を歩む必要があるだろう」
とコメントしておられますが、そもそも仏教はどの時代であっても、「現代人の体質」と二人三脚で歩んできた宗教です。ある意味適応力抜群の宗教なのです。また、僧侶宅配問題のレスポンスはありません。「仏教界」なるものがあるのならば、一度、真剣な議論が必要な時期が来たのではないかと思います。


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株式会社コムニタス

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