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コラム
親ひとり子ひとりを想う
2019年5月9日 公開 / 2020年10月25日更新
6年前の日記
緊急手術を終えたICUにいる私のところに倉敷からお袋が駆けつけてくれた。酸素マスクを付け、点滴の管が両腕からいくつも入っている私を見て、まるで人造人間のように見えたのではないだろうか。
恐る恐る「どうしたん」と、上から覗き込んで声を掛けてくれたお袋はベットから見るとえらく小さく思えた。
私が生きているのを確認すると、「私より早く死んだら親不孝者じゃ」と言い残し、そそくさと倉敷へ帰って行った。
80歳を越えた袋が、はるばる倉敷から京都まで一人で来てくれたことに驚き、心配だったが、この時ばかりは感謝の気持ちでいっぱいになった。いくつになっても親と子の関係性は崩れないものだとつくづく思い知らされた日になりました。
これは6年前に病院で書いた日記。
そのお袋も今は認知症になって特養に入っています。これらのことを、まるで昨日のことのように覚えていますが、今は遥か遠くに感じます。
想い出を消し去る認知症という病気は、残った家族の中にある想い出まで遠くにもっていく残酷な病気。今のお袋は1分前に話したことを忘れます。もちろん、過去のことを聴いても何一つ覚えていません。
でも、不思議なのは私の顔はまだ覚えていてくれます。いずれ私の顔も忘れるでしょう。そうなったら、息子が会いに来てくれたと嬉しそうなお袋の顔も消えて、いつも初対面の人間と会うストレスだけが残るのでしょうか。
【小さな実践】
自分の日記を読んだ時、懐かしいと感じるのは確実に長期記憶に残っているということ
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