やる気が出たら、本気を出そう

小橋広市

小橋広市

テーマ:マインドセットの書き換え

「やる気が出たら、本気を出そう」。

そう自分に言い聞かせて、結局、何も手をつけられないまま一日を終える。私自身が、長いあいだそうでした。

仕事は納期ぎりぎりまで動かさず、後になって自分を追い込む。部屋は目に見えるところだけ片づけて、細かなほこりは見ないことにする。「行動力を上げたい」と毎年のように願うのは、裏を返せば、それがずっと苦手だったからです。

そんな私が、やる気との付き合い方を少しずつ変えられた、きっかけの話をします。
リスタート
転機は、毎朝のヨガでした。出張のとき以外、もう何年も続けています。毎朝のように「今日は休もう」という声が聞こえますが、その都度「10分だけ」と決めて、とりあえずマットに立つ。すると気が乗らないまま始めても、体が温まるころには、最後までやり終えている。

部屋の片づけも、同じでした。価値観のまるで違うパートナーに手伝ってもらいながらの断捨離。「想い出があるから」「いつか使うかもしれない」という私の甘い言い訳を、パートナーはためらいなく切り捨てていく。最初はたじろぎましたが、おかげで手が止まらずにすみました。

ここで働いていたのが、「作業興奮」という仕組みです。やる気が出てから動くのではなく、ほんの少し動いたことで、やる気が後からついてくる。最初の取っ掛かりさえ越えてしまえば、脳のほうが動き出します。

コーチングの現場でも、動けないことを「自分の意志が弱いから」と責めて、かえって動けなくなる方に、何人も出会ってきました。けれど、動けないのは意志の問題ではなく、取りかかりの仕組みの問題。そう捉え直すだけで、肩の力がふっと抜けます。

コツは、ハードルを思いきり下げること。「全部やろう」と思うと腰が重いのに、「10分だけ」「ひとつだけ」と決めると、ふっと動けます。

私がよくお伝えするのは、始める前に「終わり」を決めておくこと。「10分で区切る」「引き出しをひとつだけ」と終点を見せておくと、人は驚くほど動きやすくなります。終わりが見えていれば、最初の一歩は軽くなるからです。

もうひとつ、大事なことがあります。一気にやらない、ということ。勢いがつくと全部片づけたくなりますが、やり過ぎると、そのぶり返しで疲れ果て、次に動く気力まで消えてしまう。脳は、大きな変化を恐れます。だからこそ小さく刻んで、脳を上手に騙していく。

小さく区切って手をつけ、ひとつ終えるたびに、ささやかな達成感が残ります。その小さな達成感こそが、次のひと手の燃料になる。無理にやる気を奮い立たせなくても、達成感が次の行動を呼んでくれるのです。

イヤイヤ始めた断捨離は、いつのまにか、少し楽しめるものに変わりました。一度すっきりした心地よさを知ると、今度は散らかった状態のほうが落ち着かなくなる。意志で頑張り続けるより、整った環境のほうが、自然と私を動かしてくれます。

朝のヨガも、もう何年も途切れていません。意志が強くなったからではありません。「10分だけ」という小さな入り口を、毎朝くぐっているだけです。そしてこれは、片づけや運動にかぎった話ではないと、今は実感しています。仕事も、人間関係も、健康づくりも、最初の小さなひと手から動き始めるのだと。

もし今、「やる気が出ないから」と後回しにしていることがあるなら、いちばん気になっているところを、ひとつだけ選んでみてください。そして、ほんの10分だけ手をつけてみる。

やる気は、待つものではなく、動いて連れてくるもの。その最初のひと足を、今日、ほんの少しだけ踏み出してみませんか。

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小橋広市(講師)

一般社団法人Self&Lifeコンディショニング協会

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