どっちを切るのか！？！―片方を選ばざるを得ないとすれば・・・・―（前編）

今日の目次
・税理士として30年
・先代と成功体験
・時代によって異なる価値観
・対立の構造が生まれる要因
・古い世代と今を生きる世代と

税理士として30年

このコラム、過激なタイトルをつけてみました。これから書く内容もそうなります。或る意味、私にとってリスキーな展開にもなるお話でもあります。
税理士として地方の中小企業を担当してきて約30年が経ちました。経営におけるいろんなケースを見てきたことは確かです。地方の場合、ほぼ例外なく過疎化高齢化が進んでいるので、企業もその数をかなりの勢いで減らしています。
商売が成り立たなくなっているから後継者に引き継げない、後継者がいないから商売が続かない・・・いずれにしても負のスパイラルに陥っているために地方経済はかなりの勢いで疲弊している、と言っていい状態です。

先代と成功体験

そんな経済環境の中で、これまで多くの顧客に接してきました。全体的にこの状況を深堀りしながら分析していけば、いろいろと言いたいことや解決への提案などもあるのですが、今回はちょっとテーマを絞ってみたいと思います。それは、後継者がいるにもかかわらず、事業承継がギクシャクしてしまうのは何故なのか、ということです。
後継者問題を考えるということは、当然その前には「先代」という立場の人間が存在していることになります。当たり前の話ですが、先代から次の代に移る時点で「後継者問題」は起こってくるのであり、これがスムーズにいけば悩む必要など全くない話であります。しかし、残念なことに、そうは簡単にいかないのが世の常なのです。
まず、多くの場合、先代はある程度の成功体験を通過しています。初めから全くうまくいかなかった商売であれば、続いているはずもないので、後継者問題は起こりようもありません。事業を引き継いでいくかどうかは、ある程度成功した事業というベースがあるから起きてくる課題なのです。

時代によって異なる価値観

さて、ここで必ずぶつかるのが世代間の価値観の違いということになります。価値観の相違にはいろいろありますが、こと事業経営に絞ってみた場合、その違いには大きいものがあります。
私は個人個人の価値観には、その人が生きている時代が大きく反映されていると思っています。しかも、その時代によって反映される様々な価値観というのは、今かなりの振り幅で変化しています。そのスピードと振幅の大きさたるや、昔に比べて段違いの速さと規模であると言えましょう。
人が年を重ねていっても、その時代その時代に反映される価値観に順応できればいいのですが、なかなかそうはいきません。特に「成功体験」という過去を持つ年配経営者は、それを捨てることができないでいるのです。

対立の構造が生まれる要因

時代によって作られる価値観は、個人に反映されると書きましたが、その影響を最ももろに受けるのは若い世代ということになります。つまり、後継者世代は、ほぼ例外なくその時代の価値観の中にどっぷり浸かって生きています。ですから、先代が成功体験を味わった時代の価値観で止まっているとすれば、継者世代と話が合わなくなるのは当然の話なのです。
私は平成に入って間もなく税理士登録をしたので、まさにこの平成の時代に顧客と関わってきました。残念ながら平成の頃は、事業経営としてはあまりいい時代ではなかったと思います。それは、日本経済がずっと低迷していたからに他なりません。
多くの年配の経営者が成功体験を味わったのは、その前の昭和の時代ということになります。ということは、成功体験といってもかなり昔の話なのです。つまり、世代間による価値観の違いというのはちょっとやそっとの落差ではないことになるのです。
時代との相性ということで言えば、先代のそれは今ではかなり時代から遊離した価値観なのです。にもかかわらず、先代世代が経営について主張する際の声には大きいものがあります。ここに対立の構造が生まれる要因があるのです。

古い世代と今を生きる世代と

さて、ここまでごちゃごちゃ書いてきましたが、ここからが本題です。その古い価値観の世代と、今を生きる世代の価値観がぶっつかったときどうするか、という話なのです。まあ、親子だから取っ組み合いの喧嘩というわけにもいかないでしょうが、激しい対立構造になることだけは避けられません。
こんな事態に際しても、立場上、担当税理士として私なりの判定をしなければなりません。冒頭、リスキーな話になるかも、と書いたのはこのことを指しているのです。
私が見てきた多くのケースでは、こういったときいったいどうなったでしょうか？



新年の夜明け


つづく