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経営の女神に微笑んでもらいたかったら―トップの決断、経費削減か売上アップかー

海江田博士

海江田博士

テーマ:経営について考える

もしも経営の神様が降りてきたら

世の中の経営者が、業績が上がらず四苦八苦しているとき、経営の神様が目の前に降りてきて
「次の二つのうち、どちらか一つの解決法を授けてやろう。『経費削減』か『売上アップ』のどっちがいいか?さあ選びなさい。」
と言われたならば、経営者の皆さんはどっちを選ぶだろう?
私は「そんなもん、ノータイムで『売上アップ』の方を選ぶに決まっているじゃないか!」と思っていた。
しかし、近年、皆さん本当にそっちの方を選ぶのかな?と、少し疑問に思い始めている。

売上アップ?!?無理無理

決算に際して、担当者と顧問先に同行すると、先方の社長に「先生、何か経費削減の方法はありませんかね。どこか削るところがあったら教えてください。」と聞かれることが多い。もちろん、無駄な支出は抑えるべきだし、それが目立つようであれば指摘もする。
しかし、私の胸の中にはこんな思いが去来する。
『そういえばこの社長、一昨年もそれに去年も同じことを聞いていたっけ。今年も同じことを聞いている。この調子だと来年も同じことを聞いてくるのかも知れないぞ・・・』
思い返してみると、この社長から売上アップの話が出てきたことがない。そっちに水を向けても
「そんなこと、どだい無理無理。今の世の中、売上を上げるなんてとてもできっこありませんよ。」
といった返事しか返ってこないのだ。そうこうしていてもう何年にもなる。

売上アップは青天井

確かに利益を確保するという意味では、経費削減は有効である。売上が変わらなければ、経費を削った分、確実に利益は上がる。
その点、売上を伸ばしたとしても、利益が上がるとは限らない。原価率や経費が嵩むことになれば、却って利益が減る場合もあるのだ。
しかし、先の社長の言葉は、そこを想定してのことではない。売上を上げること自体を最初から「無理だ!」と諦めているのである。
毎年毎年、ずっと経費削減だけを考えていて経営が楽しいのだろうか?そりゃまあ楽しいわけがないだろう。
それに、なんといっても、経費削減は経営改善の決定的な切り札にはなりえない。いつまでも、経費を削り続けることはできないからだ。どこかで限界が来るし、その途中経過も面白いものではない。
その点、売上の追求に天井はない。もちろん、現実的には自社の規模や人材などの問題はあるだろうが、理論的には青天井である。同じ経営を考えるなら、そっちの方が楽しくないかなあ、と私は思う。

現実的作業と創造的作業の違い

少し視点を変えた言い方をすれば、経費削減は現実的作業であり、売上アップは創造的作業である。例えば私の場合、現実的作業は部下に任せている部分が多い。(だからときどき、ボスの経費削減についてもいろいろと言われるわけですが・・・)
私はどんな現実下にあっても、常に「どうやったらもっと売上を取れるものか。」と、考えている。そのためには、これまでとは異なる方針や方向性を出す必要に迫られる場合もある。だから、必死で考えなければならない。
そんな想定のもと、常に有効なインプットは怠らないようにしているつもりである。また、そうやって自身で考えたことをアウトプットするという作業も必要になってくる。
例えば、今書いているこのブログなどは、普段私が学習や経験していることについて、頭の中を整理してそれに関してどう考えたのか、といったことを世の中に問うているのだ。こういった一連のプロセスの中で、次の方向性やアイディアといったものも浮かんでくるのである。

諦めたらゲーム終了

要はトップの姿勢だと思う。スラムダンクの中の言葉ではないが「諦めたらそこでゲーム終了。」なのだ。経費削減も期限付きでスポット的に考えるのはいいけれど、いつもいつもそればかりでは、いつかはゲーム終了(つまり倒産か廃業)になってしまう。経費ゼロの事業などあり得ないからだ。
冒頭の話に戻ろう。ゲームを投げないのであれば、経営の神様には「どうか『売上アップ』の方でお願いします。」とお願いすべきだろう。
しかし、そこで神様は
「ただし、一つ条件がある。わしが与えるのはヒントだけじゃ。強力なヒントは与えてやるが、あとは自分で工夫し考えるのじゃぞ。」
とおっしゃるかも知れない。
そのとき
「そんなあ・・最後まで全部面倒見てくれるんじゃないですか!?」
と甘えてはいけない。
ヒントだけもありがたいと思わなくっちゃあいけないのだ。

勝利の女神がほほ笑むには

ここで「神様」というのは有効なインプットを指すと考えていいだろう。目を皿のようにして、世の中をちゃんと見渡せば、有効なインプットの材料は必ずあるはずである。
ここに関して的をはずさずにきっちり押さえさえすれば、何をすべきかという神様のヒントはきっと降りてくるだろう。あとはそれを基に自分がどれだけ頑張るか、つまり具体的な行動に移すか、にかかってくる。
行動に移す・・つまり「経費削減」ではなく、「売上アップ」を選べば、様々な困難やリスクが降りかかってくることは避けられない。しかし、経営者は少々のことでめげてはいけない。
それくらいの気持ちがなくては、勝利の女神は微笑んでくれないのだから。



うちの経理部長
経費削減に関してこの方には頭が上がりません。

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海江田博士
専門家

海江田博士(税理士)

税理士法人アリエス

税務相談はもちろんのこと、従来の税理士としての職務に留まらず経営者自身で革新できることを目指した支援を続けています。日本経済をしっかりと支えられる強い基盤を持った中小企業への第一歩のお手伝いをします。

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