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社長の悩み「後継者問題」への一つの解答、それは・・・―この新しい試みを共同作業で―

海江田博士

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テーマ:事業承継、後継者問題

廃業しかないのか!?!

日本の抱える大問題の一つに「後継者問題」があります。日本企業(そのほとんどが中小企業・・)の6割近くが「後継者問題」で悩んでいる、という統計が出ています。多くの中小企業にとって、これが一番の課題と言ってもいいかも知れません。
この問題は、単に後継者不足ということもあるのですが、事業の先行きに目途が立たず、後継者にすんなりと道を譲れない、譲るわけにはいかないというケースも多いようです。実際、私が関与しているクライアントさんも、後継者への橋渡しがあまりうまくいっていません。
直系の身内に後継者がいない場合は、何かしらの対策を考えておかなければならないのですが、多くの場合後手後手に回っていることがほとんどです。年齢的にギリギリになってから、『次を養成しなきゃなあ・・・』と考えたりするのですが、それでは間に合うはずもないので、最後は廃業か売却といった手段に訴えることになります。
とはいっても、まだ売却(企業譲渡「M&A」ということになりますが)の方はそれほど一般的ではありません。結局、そのほとんどが「廃業」ということになるのです。
残念ながら、サポート役の私たちも、このケース(廃業の場合)ではできるだけソフトランディングとなるようお手伝いするしかありません。それがかなりの年配経営者の場合、せめてハッピーリタイアを願うしかない、ということになります。もったいないと思いますが、仕方のない現実でもあります。

後継者がいるにもかかわらず・・・

しかしながら、もっともったいないと思うのは、後継者がいながら事業承継がうまくいっていない、というケースです。この場合、ほとんどの中身は「親子問題」ということに尽きます。つまり、親子間の確執ということです。
親子間の引き継ぎ、コミュニケーションがうまくいっていないために、せっかく若い後継者がいるにもかかわらず、事業がスムーズに承継されません。そのために、業績が伸び悩み次の展望が見えない、といったことになります。
典型的なケースは
― 先代は、自分が軌道に乗っていた時代(主に昭和)のビジネスモデルを、そのまま後継者に伝えようとするが、現代の経済環境には適合しないのでうまくいかない。後継者もそのことはわかっているものの、実権がないために、正面切って反対もできない。
後継者は、トライアルとして現代に合ったビジネスモデルを時折提案するが、大抵の場合、先代には受け入れてもらえない。後継者の方もそのモデルに確たる自信がある訳ではない(なんせトライアルですから・・)ので引っ込めざるを得ない。かといって旧モデルではやはり通用しない。
そのまま、旧モデルとも新モデルともつかない、中途半端な状況が長く続くことになる。この現状にやがて後継者のモチベーションが下がり、一向に業績は改善しないまま、親子ともども廃業を検討し始める。―
といったところでしょうか。
かなり悲観的なケースを書きましたが、私がこれまで見てきた中で、このような状況は1件や2件ではありませんでした。そこそこいい歳になってから、結局事業承継を諦めて、転職した後継者もいました。事業を続けていれば、もっと地元経済に貢献もできたのに、と残念に思ったものです。

手を携えて「情報発信(アウトプット)」に取り組む

「後継者問題」に対する対策としては、前述の「M&A」を含め、いろいろな提案がなされていますが、なかなか決定的なものは見当たりません。もっと身近なところで、なにかできることはないものでしょうか。
ここで、かなり唐突に聞こえるかも知れませんが、こういった状況を打破するために、経営者の「情報発信(アウトプット)」というものを有効活用してみたらどうか、と提案したいのです。先代と後継者、両者で手を携えて「情報発信(アウトプット)」に取り組んでみたらどうでしょうか。
発信する内容はこれまでこのコラムでも書いてきましたが、自社に関する様々な情報全てです。設備や規模といった自社の現状だけでなく、沿革、歴史、特質、こだわりといった無形の企業資産といったものも含まれます。
この、情報をコンテンツ化する過程と、コンテンツとして整理されたものを発信する際に、先代と後継者の連携が必要になります。つまり、「情報発信(アウトプット)」に親子の共同作業で臨んではどうか、ということなのです。
理由は簡単です。コンテンツの中身については親世代の方が多くの情報を蓄積しており、それを発信するためのSNSなどのノウハウについては後継者世代が得意だからです。とはいえ、別にそんな風に明確に分ける必要もありません。できるのであればどっちがどっちをやっても一向にかまわないのです。

役割分担で共同作業

通常、キャリアの長い親世代の方が、会社の様々なエピソードを含め、多くのコンテンツ化への材料を持っていることでしょう。ただこれまで、それを有益な企業情報として発信可能な状態にまで整理してみよう、などと考えたことはないと思います。
考えてみれば、私がずっと述べてきましたようにこれは実にもったいない話で、宝の持ち腐れなのです。ただそれを、先代を含め誰も「宝」だとは思ってこなかったのです。
後継者には、それらの「宝」である元ネタを発信可能なコンテンツとしてまとめる作業をやってもらいたいのです。そのためには、先代からあれこれとその材料となるソースを引き出す必要があります。そんな試みを実践してみてはどうだろう、と提案したいのです。
そこではどうしてもコミュニケーションが必要になります。これまであまり良好でなかったコミュニケーションも、一つの目的に向かってのものならば、可能になるのではないでしょうか。
先代がSNSなど、現代的なテクノロジーの取り扱いが、それほど得意でなかったとしても、若い世代にとっては何のこともないはずです。先代も、自分が伝えたかったことが広く発信されるのであれば、「情報発信(アウトプット)」に反対することはないと思います。

チャレンジすべき試みと確信している

今や「情報発信(アウトプット)」は企業の販売促進部門だけでなく、総合的な成長発展にとっても必須のテーマだと私は思っています。このテーマを高度なレベルで実現することができれば、企業活動にプラスに働くことは間違いありません。
その有効な「情報発信(アウトプット)」を実現させるためには、先代と後継者の間での共同作業が必須です。そのために、密なコミュニケーションを図ることができれば、それはお互いの理解を深め、企業の次のステップへの足掛かりとなるはずです。
先代に「情報発信(アウトプット)」の重要性を理解してもらうには、少し説得のための努力が必要となるでしょう。しかし、その後の効果を考えれば、これはチャレンジすべき試み、と確信します。
こう書きながら、その役割を後継者に期待しているのは、筆者自身でもあります。というのは、「情報発信(アウトプット)」を高度に活用する、という方法論そのものが、これまでのビジネスモデルにない新しい試みだからです。
筆者が生業(なりわい)としている税理士業務にしても、中小企業、とりわけ地方のそれが発展成長しないことには成り立ちません。その成長発展のための切り札が「情報発信(アウトプット)」と考えているわけですが、若くて柔軟なマインドでなければ、なかなかこういったことは理解しがたいし、実践できないのです。
私は長年このことに取り組んできましたので、それがいかに意味のある試みかということをお伝えすることができます。後継者問題に明らかにより明るい展望が開かれることと確信しています。




事業承継、真剣に考えましょう。

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海江田博士
専門家

海江田博士(税理士)

税理士法人アリエス

税務相談はもちろんのこと、従来の税理士としての職務に留まらず経営者自身で革新できることを目指した支援を続けています。日本経済をしっかりと支えられる強い基盤を持った中小企業への第一歩のお手伝いをします。

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