販売促進について考える―まだまだ手薄な地方企業における販売促進戦略事情―Ⅵ(おしまい)
経営5か年計画
先日、ある若い経営者が、私の経営するもう一つのコンサルティング会社に経営計画の策定にやってきました。これは、もう数年来実施している、一日をかけて経営計画を策定する、という一つのパッケージサービス商品です。
中身としては、これから迎える将来の5か年について、今考えている事業上の構想などを、経営計画に落とし込んで今後どうなって行くのか見てみようというものです。結構人気の高いサービス商品で、これまで数十社の企業に実施してきました。
さて、今回の経営計画の詳細を見てみたところ、その中で彼が、かなりの予算を広告宣伝費につぎ込んでいることに少し驚かされました。というのは、中小企業の経営者が、特に地方においてこれほどの予算を広告宣伝費に割くというのはかなり珍しかったからです。
そのことを問いかけてみると、彼によれば、つぎ込めるものならばもっと広告宣伝費には使ってもいい、と考えているとのことでした。かなり驚かされたのですが、これには、それなりの理由があったのです。
アグレッシブな経営者たち
彼は、定期的に東京で開催される、ある経営者の集まりに所属していました。その彼の所属している経営者の集まりでは、売上目標についてみんなの前で発表することになっているのです。
その際、その目標を達成するために何を実行していくのか、他のメンバーから具体案を厳しく追及されるということでした。そういった切実な背景があったために、販売促進戦略の一つである広告宣伝についても、彼は熱心に取り組んでいたのです。
その経営者の集まりは、彼の話を聞いていると、ほとんどが極めて前向きな経営者のようでした。そのため、私の目からはかなりアグレッシブに見える彼でさえも、参加していると気後れすることがあるとのことでした。
そういう会ですので、メンバーはみんなどん欲に業績の向上に向き合っているとのことです。当然、そんな経営者たちを指導する先生も極めてアグレッシブなタイプのようです。そういった環境だったこともあって、彼は、その指導者の先生にも、普段から「創業時から広告費をケチケチするんじゃない!」とはっぱをかけられていたのです。
広告宣伝と「情報発信(アウトプット)」
彼は、その会で学んだそういった教えを素直に実行していたようです。そのためか、実際、会社設立から数年しか経っていないにもかかわらず、業績は倍々ゲームで増やしていたのです。
とにかく社歴が浅いのでまだ誰も自分の会社の名前を知らない、だから人一倍広告には金をかけて認知度を高める、という点は徹底していました。当たり前の行為のように見えますが、こんなことですら実践していない新規経営者というのは意外に多いものです。
また彼は、広告宣伝以外に、「情報発信(アウトプット)」の大切さということも、かなり自覚しているようでした。具体的には、「情報発信(アウトプット)」の継続性に重点を置いており、ブログは毎日書いているとのことでした。
実際、彼はインプットにも熱心で、私のブログも読んでいました。それがきっかけで、私のコンサルティング会社に接触してきたのです。そうやって接触してきたのは、事前にこちらの方針や考え方を知ったからということがわかったので、私自身も改めて「情報発信(アウトプット)」の大切さに思いが至ったのでした。
現代経営では何が大事なのか
こういった経営者の登場を見ていると、新しい時代の到来を予感しないではいられません。広告宣伝といった販売促進戦略や「情報発信(アウトプット)」の大切さに関する考え方が、これまでの古いタイプの経営者とはまるで違っているからです。
先行投資としての広告宣伝費にかける予算の桁がまるで違うことにもそれは如実に表れています。つまり、現代の経営において何が大事なのか、を的確に押さえているのです。
自らのビジネスについては、常に外に向かって相当の圧力でアピールし続けていないと、様々な情報が溢れている現代社会では、たちまち埋没してしまうことをよく理解しています。そのために金のかかる広告宣伝と、お金はかからないけれど自らの日々の努力が必要なSNSを通じての「情報発信(アウトプット)」を巧みに使い分けているのです。
欲しい若い経営者の成功事例
とはいえ、彼の場合まだキャリアが浅いので、本物の優れた経営者になれるかどうかは、私の会社のコンサルティング等を通じて、しばらく二人三脚で進んでみなければ何とも言えません。しかし、少なくとも今チャレンジしている方法論については今後もトライを続けるべきです。
こういった若い経営者の成功事例が次々と確認されてくれば、これまでの経営手法はかなりの勢いで変革を余儀なくされていくことでしょう。中でも、これまであまり行なわれなかった企業による継続的な「情報発信(アウトプット)」という手法は、やがて大きなリターンとなって帰ってくることが確認されると思います。
これからの企業は、自らをメディア化していくくらいの勢いが必要になってくると考えられます。おそらくそれは企業の標準装備として、取り組むのが当たり前の世界になっていくはずです。
ステップアップを図る経営者たち