突破できるのか、業界の常識というハードル―業界の常識は世間の非常識??―Ⅱ
「管理」という仕事
中小企業の支援を仕事にしていますと、社長さんたちは例外なく組織の「管理」という課題に直面しています。特に、コンプライアンス(法令順守)がうるさくなってきた昨今、「管理」は避けて通れない大きなテーマなのです。
ただ、悩ましいのは「管理」は経営者にとってそれほど面白い取り組みではない、ということです。おそらく「管理」が得意で大好きで・・といった経営者はそんなにいないのではないでしょうか。
「管理」は利を生まない?
何故でしょう。それは「管理」が直接「利益」を生むものではないからです。普通の場合「管理」に関して整備することは、お金がかかっても、お金を生み出すものではありません。ここが、経営者の心理にブレーキをかける一因だと思われるのです。とはいえ、これを整備していないと、内外からとんでもないペナルティー(制裁)を受ける可能性が、昔に比べればずっと高くなっています。
また、社内管理体制の整備は、社員にとって働きやすい環境とか、きちんと保証されているという安心感を生み出す元でもあります。つまり、間接的には「利益」に繋がらない訳ではないので、ここを整備することはもちろんそれなりに意義のあることなのです。
「管理」=「経営」という誤解
もう一つ、「管理」には大きな特徴があります。それは「管理」はそのほとんどが、内側に向けたものであるということです。つまり、従業員を含む組織の内部を「管理」することはあっても、外の存在であるお客さんを「管理」するということはあり得ません。
とはいえ、組織にとって管理体制というのは大事なものなので、経営者はかなり多くの時間を割いてこれと向き合わざるを得ないことになります。そうすると、ここで少し困った問題が浮上してくるのです。
それは、経営者の中には「管理」と向き合って入るうちに「管理」そのものが「経営」と誤解する人が出てくるということです。特に商売があまりうまくいかず、思うように「儲け」が確保できていないと、内に向かって「管理」にばかり目がいく経営者が出てくるのです。
「内向き」という罠
事業がうまくいっていない場合の「管理」には、コストダウン、経費削減、リストラといった負の言葉が付きものになります。特に「リストラ」は「管理」のマイナス面の究極の行きつく先、と言ってもいいのではないでしょうか。もちろん冗費の削減は大事ですし、事業の局面によっては「リストラ」もやむを得ないケースもあるでしょう。
しかし、ここで怖いのは、このゾーンに入ってしまった経営者は、最も大事な役割である「外を向く」ということをしなくなるということなのです。私はそんな経営者を何人も見てきました。
経営者に必要な「双方向性」
私は、経営者には常に「外」を見ていてもらいたいと思っています。また、見るだけでなく「外」から常に何かを取り込んでいて欲しいとも思っています。
つまり、経営者は会社の「顔」として、情報の出し入れの「双方向」に関わっていただきたいのです。単なる「管理者」となってこの役割を忘れてしまうと、事業の発展は覚束なくなります。
私が「経営者は、常に外に向かって、自分の事業をアピールするための『何か』を仕掛けていてください。」というと、「内部のことが手いっぱいでそれどころじゃない。」という社長さんがいますが、とんでもない話です。中間管理職ならともかく、経営者は常に「外」に向かって何かしらのアクションを起こし続けていなければその存在意味がありません。
ときとして、組織的としてはその状況(外へ向かってのアクションを続けること)が難しくなっている場合でも、経営者だけは「双方向性への意識」を失ってはいけないのです。内部処理だけで手いっぱいだとしたら、単なる管理職の肩代わりをしているに過ぎません。
「意識」を外に向けることの意義
経営者が個人レベルでも持続可能な「外」の世界との接点は、私がお勧めする様々な形での情報発信です。このことによって我が社はその存在を示し続けることができるのです。とはいえ、大半の経営者は、苦しいときにはここにほとんど手が回りません。
世の中の多くの中小企業が経営に四苦八苦している中、とにもかくにも「外」に向かって情報発信を続けている企業経営者は極めて少ないといえるでしょう。こういうときに、意識を「外」に向けて情報発信を続けていれば、それは自然にほかとの差別化を図ることになり、やがて何倍もの成果として御社に還元されることと思います。
これが、私が言い続けている、経営者が「外」に意識を向けることの意味です。経営者は常に意識を「外」に向けることを忘れないで下さい。
管理しますか?「働き方」