男子のディズニーランド―男の楽しみ、今と昔―
わかりにくい「素人目線」=「顧客目線」という構図
タイトルの「二代目」というのは、別に二代目だけでなく三代目でも四代目でもいいのです。広く後継者のことを指しており、時代性に敏感な若い経営者ということです。更に言えば、年はあまり関係なく対応力に富んだ柔軟な感性を持っていれば、むしろ誰でもいいのです。
私はこれまで「素人目線に立ってみることが大事」と訴えてきました。自らの専門性の世界の中でどっぷりと仕事をしてきた現役経営者には、この「素人目線」即ち「顧客目線」という構図がわかりにくいだろうと思ったからです。
先代との軋轢は避けられない後継者の気づき
ところが世の中には、専門事業者でありながら、この「素人目線」の側に自然と立てる立場の人間が一人だけいます。いったい誰でしょうか。それが「後継者」なのです。後継者は普通の場合、先代(親である場合が多い)の背中を見て育ってきていますので、その専門性についてはある程度理解しています。
しかし、一方で地元を離れて大学に進学したり外の企業で一度働いたりしていれば、自社とはまた違った世界を見てきていることも確かです。そういった違う発想を持って自社のある地元に帰ってきたときに、おそらく何とも言えない違和感を覚える瞬間が多々あるのではないでしょうか。
先代や先々代がそれまで守ってきた伝統や仕事のやり方、或いは地域性といったものが、自分が見聞きしてきた世界とあまりにもかけ離れたものであると気づいたときに、そのことを強く感じるはずです。そんなとき、そういった既存の価値観に対して、疑問と同時にある種の不安を覚えるのではないでしょうか。「自分が見聞きしてきた外の世界の現状とは随分乖離しているな・・・」と。そして後継者が、そういった疑問や違和感を言葉にして表に出した途端、間違いなく現役である先代とぶつかることになります。
「事業者目線」としてだけでなく「顧客目線」で見る
以前、私はこのコラムで、先代とぶつかったケンカの内容そのものを、後々振り返ってきちんとその中身を精査し整理してみれば、それはそれなりの内容を伴った経営上のヒントに充分なり得ますよ、と書きました。あのお話は、まさに上記のような状況のことなのです。
このように、後継者は、自社の事業を客観的に見ることができる立場にあります。そのとき「事業者目線」としてだけでなく「顧客目線」で見たらどうか、という視点を自らの発想に明確に組み入れてみれば、より客観的な自社評価というものが可能になるのです。これは後継者にしか立つことのできないポジションと言えるでしょう。
後継者であればうまくいく「情報発信(アウトプット)」
さて、問題はここだけにとどまりません。むしろ本題はこれからです。
そうやって掴んだ自社の客観的な評価を、今度は一つの材料として「情報発信(アウトプット)」していくのです。表現には気をつけなければなりませんが、自社がこれまで守ってきたもの、大事にしている考え方や価値観といったものを伝えて行くのです。その際に先述の「素人目線」や「顧客目線」という別角度を組み入れることで、それを読んだり聞いたりする第3者にとって随分と理解しやすい内容となるはずです。
自社の事情や専門性にあまりにもどっぷりと浸かってきた現役経営者には、少々難しいと思われる自社のことを客観的に伝える「情報発信(アウトプット)」も、俯瞰的見ることのできる後継者であればよりうまくいくかも知れません。社内の実務面ではぶつかることの多い先代と後継者というお互いの立場があると思いますが、外へ向かっての「情報発信(アウトプット)」であれば、直接の接触点がないので後継者は比較的思い切ったことを書けるのではないでしょうか。
思うところを存分に「情報発信(アウトプット)」すべし
もちろんその「情報発信(アウトプット)」の内容は、基本的にポジティブなものであるべきで格調の高さといったことも必要です。後継者であれば、自社の事業がどういった歴史をたどり現在どういう立場にあるのか、将来的にはどういったポジションを想定しているのか、といった情報を現代的な表現で伝えることはできると思います。そうすれば、思うところをいろいろ存分に「情報発信(アウトプット)」できるはずです。
これまで何回も述べてきましたが、そういった「情報発信(アウトプット)」を継続して行なうことそのものが独自性を生んでいく基盤になります。後継者はその有利な立場を活かして有効な「情報発信(アウトプット)」を心掛けてください。
志布志の夕暮れ。地平線に沈む夕日の光がすぐ上の雲に反射しているのがわかりますか?
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