あらゆるものが端末になる世界―競争はアプリからボットへ―Ⅲ(おしまい)
[環境の変化=顧客の変化]
昔からやってきたやり方や考え方に盲目的に従っていると、とんでもない落とし穴にはまっていることがある、ということを、私は父の事務所を引き継いで感じたのでした。
特別、便利とも見えないような基本的な便利機能すら使いこなしていなかったため、私のちょっとした指摘でそこは随分変わったのです。
幾つかの初歩的でお恥ずかしいような事例を、自分の事務所を引き合いにしてご紹介しました。
するとここから「思考停止という病(やまい)」という言葉が浮んできます。
人は元来保守的な動物で、変化することよりも、それまでと同じように物事が続いていくことを欲する、といいます。
その保守性は、国民性、宗教観、地域性のような大きな概念のものから職場環境、家庭環境といった小さな単位まで、背景の違いによってそこに所属する人間の意識を支配します。
もちろんそれらには、長い時間をかけて培われてきた知恵や伝統のようなものも含まれますので、一概に否定されるべきものではありません。
しかしながら、科学技術の発達や時代背景の変化によって、現実との間にギャップが生じ始めたときは柔軟に対処していくべきではないでしょうか。
特に現代ビジネス社会においては、環境の変化=顧客の変化、であることが多く、これに対処できなかったら自らの首を絞めることになりかねません。
また、技術の発達=業務の効率化、という点も同様で、対応が遅れるとライバルに差をつけられ取り返しのつかないことにもなってしまうことも考えられます。
つまり、保守性=思考停止、という状況に陥ったとき、事業そのものが危機を迎えてしまうことになるのです。
特に経営者は、自分自身が或いは組織そのものが、「思考停止という病」に陥っていないか、常に確認しながら日々の仕事を続ける必要性があるのです。
書斎のデスクに向かって「思考停止」に陥らないように考える。