突破できるのか、業界の常識というハードル―業界の常識は世間の非常識??―Ⅱ
[対人的に優位に立っていられたという記憶]
さて、ここで人間の持つ本質論的なお話になるのですが、この「売り手市場」だったころの「記憶」という奴がどう影響を及ぼすのか、ということなのです。
当時
「金銭的に儲かった」
というのはもちろんのこと、
「対人的に優位でいられた」
ということが、人間の潜在意識の中から簡単には消え去らないのではないだろうか、と思うのです。
というのは、これだけ世の中が変化し、先述したように「売り手市場」から「買い手市場」へと180度転換したにもかかわらず、自らを変えられない経営者があまりにも多いからです。
単に
「おカネを儲けたい、売上を上げたい、利益を出したい」
ということだけだったら、商売における価値観が変わったことは明らかなのですからやり方をチェンジすればいいわけです。
にもかかわらず、「変えられない」というのは、そう言うロジックでは説明できない何かがあるような気がするのです。
つまり金銭的な面ばかりでなく、
「対人的に優位に立っていられた」
ことの記憶が、一種の麻薬のように脳内を支配しているのではないか、という分析なのです。
ここが、
「企業の革新を最も阻害しているのは『成功体験』という麻薬のような記憶である。」
と、私が思う所以なのです。
もちろんこれは、表立ってそんな風に露骨に思っているという人はいる訳もなく、大抵の経営者は
「いや、そんなことはない。俺だっていろいろ考えたし努力はしたんだ。」
というでしょう。
しかしこれは、おそらく深い潜在意識の中のことなので、本人は気が付いていないのかも知れません。
右肩上がりの栄光の日々
つづく