青春の彷徨、新宿ゴールデン街―無頼に生きる、がテーマだったあの頃―Ⅰ
[きっとビビったんだろうなあ・・・・]
このいっぱしの口を聞く若造に、私がこう思ったのには理由があります。
昔、私や私の同窓の連中がこの店に通い始めた頃、常連の中ではもちろん一番年が若かったのです。(なにせ20歳くらいだったので・・・)
その頃、ママさんの芝居仲間を中心に舞踏家やマスコミ関係者など、ある程度のコミュニティーがすでに出来上がっていました。
当時、学生の身分でこの人たちに伍していこう、などと考えたのは私や私の友人たち、ごくわずかな若造だけだったと思います。
こんな事情もあってか、その後の世代間入れ替えがしばらくストップしていた時期がありました。
つまり、新陳代謝がしばらく進まない時代があったのです。
何故だったのでしょう?
私は、あの頃、あまりにも個性的かつ大酒飲みの常連たちに恐れをなして、若い客がなかなか居つかなかったのではないか、と推測しています。
その結果、私や私の同級生連中は、かなり長い間、この店の常連としては一番下っ端のポジションを外れることができなかったのです。
とにかく、この店に通う常連客のインテリジェンスはかなり高かったのは間違いありません。
そういった理由もあってか15年たっても20年たっても、私たち世代が、誰かに偉そうな口を聞くなどと言うのは許されない雰囲気がずっと続いたのです。
もし、私が15年たったころ、先ほどのような生意気な口をたたいたならば、
「ほう、海江田、お前も随分偉くなったもんだな。」
と、先輩常連達に言葉でサンドバックのように袋叩きにされたことでしょう。
だから、もちろんそんなとんでもない口をきいたりは絶対にしなかったものですが・・・
しかし、近年通い始めた連中には、そんなおっかない先輩もいないので、平気でそんなセリフを吐く輩(やから)も出てきたということなのでしょう。
つづく