涼しい顔して「OK」と言えるか―「もったい」をつけないのが男の力量―Ⅱ(おしまい)
それからさらに数年がたち、私は成人し、妹も確か短大生になった頃だったと思います。
そのときの話(『涙の連絡船』ってどんな歌だっけ?事件)を、妹がしみじみと語ってくれたことがありました。
妹いわく「あの時ほど驚いたことはなかった!」と。
上のお兄ちゃんが歌謡曲を、ましてや演歌を歌いたいなんて言い出すとは!
それは、まさかまさかのありえない出来事だったというのです。
そう、妹にとってはまさに「事件」だったのです。
妹によれば
「小さい頃から、読む本は純文学、聞く音楽はクラシック、お勉強もできて私立中学校へ行ってしまった。あの人は兄弟といっても自分とはきっと縁のない人なんだ。」
と思っていたというのです。
「その兄弟とも思えなかった上のお兄ちゃんがよりによって『涙の連絡船』!!」
あまりの衝撃に
「そのときのことははっきりと覚えている。」
と、妹からあとで聞いたのです。
私と妹の間にいる弟は、思春期の頃からロックなど聞いたりしていて、アイドル追っかけ路線だった妹とも若干共通項はあったようです。
しかし「上のお兄ちゃんは・・」・・・完全に無縁の人だったのです。
青い海。
涙涙の連絡船。
つづく