青春の彷徨、新宿ゴールデン街―無頼に生きる、がテーマだったあの頃―Ⅰ
ここで私が強く感じるのは、江本氏にしろ江川氏にしろ、先駆者の持つ恐ろしいほどの秘めたるパワーというものを読み切れなかったのだなあ、ということなのです。
それまでの日本野球界の常識、大リーグに対する不要なまでのコンプレックスを含んだ思い込みだけが、彼らの挑戦者たちに対する判断材料だったのです。
そういった前提条件のみで評価する訳ですから、先のようなコメントにしか出てこないことになります。
もちろん先駆者だからといってみんなが成功する訳ではありません。
確率から言えば確かに成功の可能性はそれほど高くありませんでした。
それまで、野茂以前の大リーグチャレンジャーはことごとくうまくいかなかったのです。
だからといって、チャレンジャーが未来永劫成功を掴めないということではありません。
必ずどこかで誰かが先鞭をつけることになります。
これまで日本人は、そうやっていろんなジャンルで世界に打って出てきたのです。
大リーグのこの重い扉をこじ開けたのは、まさに野茂秀雄投手でした。
寡黙にしてあまり語らぬ彼ではありますが、大リーグ挑戦に際しては、計り知れないプレッシャ-や不安があったことだろうと推察されるのです。
つづく