青春の彷徨、新宿ゴールデン街―無頼に生きる、がテーマだったあの頃―Ⅰ
【〇億円のリゾート会員権、需要はあるのかないのか?】
マーケティングリサーチの仕事も比較的順調に受注が続き、忙しく働いていたある日、それまでお付き合いのあった、日本最大級のエネルギー供給企業T電力のSさんから電話がありました。
依頼したい仕事があるので来てくれないか、ということでした。
打ち合わせに指定されたのは、何度か行ったことのある本社ビルではなく、本社近くのマンションでした。
私ともう一人のスタッフと訪ねて行くと、そこは少々古いながらも赤坂の一等地に建つ大きな建物でした。
当時T電力などでは、本業以外の大きなプロジェクトに取り掛かると、本社の中ではなく、こんな風に外にマンションなどを借り上げて、そこを臨時のプロジェクト推進室に使っていたのです。
まさに、大企業ならではのやり方でした。
指定された部屋に着くと、Sさんと数人のスタッフが待っていました。
挨拶をして名刺交換をすると、それはT社の社員とこれまた日本最大手のゼネコンK建設の社員だったのです。
少し張り詰めた空気の中、私たちはなんだかよくわからないまま、広いリビングに通されました。
すると、そこにはこのプロジェクト用に準備されたのか、真ん中に大きなテーブルが設置されており、その上に大判の設計図面らしい紙が、半分に折り畳んだ状態で置いてありました。
全員がそのテーブルを囲むように揃うと、Sさんが
「実は今度依頼したい案件はこれなんです。」
と、その大判の畳まれた用紙をバサリとみんなの目の前に広げました。
つづく