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受験料制度に行政指導、採用企業のホンネ

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厚労省が指摘する「受験料制度」の問題点

受験料制度に行政指導、採用者のホンネ

オンラインゲームなどのインターネット・コンテンツの提供で知られる株式会社ドワンゴ(東証一部上場)が、新卒入社試験エントリーの際に受験料を徴収した件で、厚生労働省より行政指導を受けました。同社の発表によると、今回の行政指導は、口頭による「助言」という形式で行われ、受験料制度を自主的に中止するよう求める内容だったそうです。入社試験のエントリー時に、受験料を徴収することの何が問題なのでしょうか?

ドワンゴに伝えられた厚生労働省の「助言」内容によれば、入社試験において受験料を徴収する場合、以下の点が問題であるようです。

①受験料制度が社会に広まってしまうと、経済的弱者がエントリーの段階で不利な状況に置かれる恐れがあるため。
②受験料の徴収が「報酬」に該当すれば、職業安定法の「労働者の募集における報酬受領の禁止」に抵触する可能性があるため(但し、同省内でも「報酬」の位置づけが不明確であり、直ちに違法性があるとは言えない)。

①については、受験料制度の有無にかかわらず、すでに大都市圏の学生と地方の学生との間に交通宿泊費などの就職活動費に歴然とした差があることから、経済的不公平は今に始まったわけではないような気がします。ドワンゴの受験料は2,525円だそうですから、この受験料が経済的弱者にとって著しく不利になるような金額かどうかは少し疑問です。ただし、今後、大手企業の受験料にプレミア価格が付くようなことが出てくれば問題かもしれません。

②の受験料が「報酬」に該当するか否かについては、厚生労働省内でも見解が分かれている状態であるため、現時点で違法であるかどうかの判断はできません。今後の動向に注目すべきだと考えます。

採用コストを抑え、より本気度が高い学生を集めたい企業の実情

現在、就職活動を行う学生がエントリーする企業の数は、一人当たり平均44社にも上るそうです(就職情報会社マイナビ調べ)。これはもちろん、厳しい就職状況の影響もありますが、それに加えてエントリー手続きの多くがパソコン・スマホなどからオンラインで行えることにより、多数の企業に応募することが容易になったことも一因だと思われます。

採用する企業側としては、少しでも優秀で意欲のある学生を採用したいのですが、エントリーしてきた学生が「数撃ちゃ当たる」的な考えで募集に応じていることも少なくないのが実情です。本気で就職したい学生も、何となくエントリーしただけの学生も、同じように審査して時間を割くわけですから、エントリー総数が多いとそれだけで採用コストも跳ね上がります。そのため、受験料という一つのハードルを設けることで、より本気度が高い学生が集まる可能性が高まるのであれば、受験料制度を導入しようとする企業側の考え方も理解できます。

厚生労働省の判断に引き続き注意は必要ですが、採用する側にとっても、される側にとっても、就職のマッチングがスムーズに行えるのであれば、エントリー時点での受験料制度も一つの手段ではないでしょうか。

人事労務コンサルティングの専門家

大竹光明さん(社会保険労務士法人大竹事務所)

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