広がる「1on1ミーティング」 ウィズコロナ時代に求められるコミュニケーションの効果とは
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新型コロナウイルスの感染拡大を機に、リモートワークが身近な働き方として浸透しました。ウィズコロナ時代の働き方として、今後も定着させる動きが広がるとともに、希薄になりがちな社内のコミュニケーションをどう確保するのかということが課題となっています。
リモートワーク時のコミュニケーション手段の一つとして、注目されているのが「1on1ミーティング」。上司と部下が1対1の対話の機会を持ち、部下の成長につなげる人材育成の手法です。アメリカでは一般的で、日本でもヤフーをはじめ導入する企業が増えています。「1on1ミーティング」とは。どのような効果が期待できるのでしょうか。社会保険労務士の二口寛さんに聞きました。
業務効率化の一方で、社員の思いを拾い上げる「対話」の機会が見直されている。一人一人のモチベーションアップや人材の定着につながる
Q:「1on1ミーティング」とはどのようなものですか?面談との違いはどこにありますか?
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「1on1ミーティング」とは、上司と部下が1対1で対話を行うものです。半年に1回程度開催される「目標面談」などとは異なり、週1回30分程度など、短時間でこまめに実施されるのが特徴です。ポイントとなるのは、部下が主体となって、上司と「対話」することです。
部下から業務の確認や報告をしたり、上司が一方的に評価を伝えたりする場ではなく、普段の業務では表面化しないような、部下の気持ちや考え方を共有します。例えば、「この仕事はなぜ必要なのか」「どんな思いで業務についているのか」など、これまではお互いに知り得なかったことを伝え、「これから」につなげることを目指します。「1on1ミーティング」のねらいは、部下の育成です。「指示待ち」の若手社員が多いことが問題になっていますが、「一から十まで指示される」「指示以外のことをすると怒られる」など、上司側に責任があるケースもあります。
「1on1ミーティング」で、頻繁に対話を重ねることで、上司が部下を理解し、自主的に行動できるように育てることができます。
Q:「1on1ミーティング」を導入している企業には、どのような企業がありますか?
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アメリカでは、人材育成の効果的な手法として根付いているようです。報道などによると、国内で導入している主な企業は、2012年から社員約6000人に制度化しているヤフーのほか、楽天、パナソニック、ソニー、日清食品など、大手企業が中心で、中小企業で制度として導入しているところはあまりないと考えられます。
ただ、リモートワークに限らず、企業や組織内で「部下の話を聞こう」「主体的に動ける若手を育てよう」という意識は高まっており、実際に自治体の研修などでも、若手からの意見や相談を聞く場をつくりたいという声が聞かれています。
Q:導入することで、会社側にどのような効果が期待できますか?
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まず、部下が自分で考えて行動できるようになると、上司も業務効率を上げることができ、会社全体のパフォーマンスが上がります。部下自身も、自らのアイデアで仕事を動かすことに面白さや喜びを感じるようになり、モチベーションアップにつながります。また、多くの企業で問題になっている、若手社員の定着に効果的であることも大きなメリットです。
辞める若手社員は、入社3年くらいで退職を決めることが多いですが、その要因として、社内に相談できる相手がいないことが挙げられます。「1on1ミーティング」を続けるうちに、上司と部下の信頼度が高まるため、「この会社で働くことができて良かった」と感じる社員も増えるのではないでしょうか。
若手社員の定着という視点では、20代の若手社員と対話する相手として、40代の課長クラスなど直属の上司以外に、入社3年目くらいの先輩社員と対話の機会を設けることも効果的です。
Q:1on1ミーティングを実際に取り入れる場合、成功させるコツは?
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重要なのは、上司が部下の話をきちんと「聴く」ことです。部下が「話して良かった」と思えるように、上手に話を引き出してあげる必要があり、上司には「傾聴力」や「コーチング力」が求められます。
例えば、納期に間に合わない可能性がある案件を部下が抱えているときに、上司から「どうなっているんだ。何とかしろ」と威圧的に迫られるより、「まずいね、どうすればいいと思う?」と、共感した上で問いかけられる方が、部下からの解決策やアイデアが出やすくなります。また、出てきたアイデアに対しても、聞きっぱなしにするのではなく、「コストはどうか」など、上司の視点を反映した改善策を導くことができます。
1on1ミーティングの所要時間は30分~45分程度で設定し、あらかじめ、どのような時間なのかをお互いに共有しておきましょう。話すテーマは、「仕事で最近気になっていること」などから始めるとスムーズです。あわせて、なぜこの話題を選んだかという理由も含めて聞いておくと、部下の気持ちに寄り添うことができます。
Q:リモートワークの広がりとともに、「1on1ミーティング」が注目されるのはなぜですか?今後、導入する企業は増えるでしょうか?
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出社して同じ空間で同じ時間を過ごしていると、意識しなくても、表情やちょっとした雑談などでお互いの気持ちを感じとることができます。
一方、リモートワークでは、意図的に拾い上げないと共有できません。コミュニケーションツールとしてよく使われている「Zoom」でも、ほかの人が発言しているときに割り込めないなど、雑談が生まれない空気があります。
その中で、上司と部下が1対1で対話をし、「会社や仕事に対してどのように考えているのか」「前職も含めてこれまでどのような経験をしてきたのか」など、一人一人のことを知る機会は貴重です。リモートワークに限らず、リアルでも「1on1ミーティング」を取り入れる企業は増えると考えられます。ある介護施設では、リーダー同士のミーティングで、「心が震えたエピソード」を共有することで、今後のモチベーションにつながったといいます。
社会が複雑化する中、インターネットを通して業務の効率化が進んでいます。「1on1ミーティング」に限らず、社員同士が対話をし、お互いの考えや価値観を理解する機会は、仕事の質を高めるためにも、ますます重要となるでしょう。
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