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  1. 「コロナよりも怖いのは人間だった」商品不足でドラッグストアの店員が疲弊。『カスハラ』の実態と対応策

「コロナよりも怖いのは人間だった」商品不足でドラッグストアの店員が疲弊。『カスハラ』の実態と対応策

カテゴリ:
ビジネス
キーワード:
ハラスメント防止

新型コロナウイルス感染の広がりにより、社会生活に大きな影響が出ています。先行きの見えない不安からか、デマによる混乱も深刻です。

市場では実際に不足しているマスクのほかに、本来は通常通り流通しているはずのトイレットペーパーやティッシュペーパーなどの紙製品を求めて、人々が店舗に殺到。行列を巡ってのトラブル、コンビニや飲食店のトイレットペーパーのストック持ち去りなど、人々のモラルが問われる状況も起こっています。

こうした状況が続くなか、SNSには、ドラッグストアやスーパーなどの店員からの「コロナよりも怖いのは人間だった」という悲痛な書き込みが増えているようです。

「購入制限や行列対応に不満を言われる」「『入荷はありません』と張り紙をしているにも関わらず『本当にないのか』『隠しているのでは』と罵声を浴びせられる」などのほか、一日に何度もパトロールに訪れ、入荷状況を問い詰められるなども。店員の中には、体調を崩す人まで出ているようです。

これまでにも、一見ごく普通の人に見える客からの過剰な要求やクレーム、迷惑行為が増加傾向にあり、問題になっています。
こうしたカスタマー・ハラスメント対策について、社会保険労務士の室岡宏さんに聞きました。

「カスハラ」はリスク。企業は組織的な仕組みづくり、個人はハラスメントへの耐性を上げるなどのリスクマネジメントが急務

Q:従業員のささいなミスや店舗の状況について、クレームを延々と続ける、罵声を浴びせるなど、客からの迷惑行為が起きています。こうしたカスタマー・ハラスメントの実情は?
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カスタマー・ハラスメントは、あらゆる業種で発生していますが、今回の新型コロナウイルス関連の事態で特に目立っているのは、薬局、医業機関、保育園・幼稚園、客船(クルー)などです。

日常的には、運輸、介護、教育、飲食、小売り、販売、接客など挙げればきりがありません。

ハラスメントの内容も「罵声を浴びせる」「脅す」「言いがかりをつける」「謝罪や土下座を要求する」「セクハラ行為をする」「ストーカー行為をする」「暴行を加える」など、例示しきれません。

Q:マスクや紙製品の品薄による混乱では、複数の客の問い合わせに一日中対応し、謝り続けることが負担となって、体調を崩すといったことが起きています。これはカスタマー・ハラスメントとは別問題でしょうか?
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処方箋薬局や医療機関などへの問い合わせは、たとえそれが一日中続いて、業務に支障をきたすとしても、通常業務の範囲と言えます。
ただし、その中で罵声を浴びせられたり、理不尽な要求に対して謝罪を強要されているのであれば、それはカスタマー・ハラスメントに該当します。

例えば、マスクは入荷未定としているのに、「本当はあるのに、うそをついているのだろう」と言う、「入荷したら連絡して」と要求した際「個別のご連絡はできない」という説明に対して罵声を浴びせたり、しつこく要求するなどはカスタマー・ハラスメントに当たります。

Q:カスタマー・ハラスメントに対抗する何らかの法律や制度はありますか?
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「対抗する」という意味では、不退去罪、脅迫罪、強要罪、威力業務妨害罪、恐喝罪などが適用され、実際に逮捕される事例もあります。

ただし注意が必要なのは、企業や経営者はカスハラに対して「対抗する」ことだけを考えるわけにはいかないということです。
企業や経営者は、労働契約法により、従業員の心身の安全を守らなければならないという責任、「安全配慮義務」を負っているのです。

この「安全配慮義務」を果たしていないと判断された場合は、債務不履行で、従業員に対する損害賠償を命じられることにもなります。
つまり、カスタマー・ハラスメントが起きた場合、企業や経営者は「被害者」であると同時に、従業員を守る義務があるにも関わらずこれを怠った、ある意味「加害者」の立場でもある、ということになるのです。

社内の問題である「パワハラ」ですら、2020年6月からの法改正でも、具体的に踏み込んだとはとても言えない内容です。
ましてや社外との問題である「カスハラ」について、行政・法律で明確な「境い目」を定めることは難しいのではないかと思われます。

Q:今回のような想定外の事態で、顧客から店頭でハラスメントを受けた場合に、当面の対策としてできることは?
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新型コロナウイルス関連の商品不足で発生しているカスタマー・ハラスメントへの対策として、考え得る方法をいくつか挙げてみます。

(1)常にレジの後方に「管理職」が常駐し、客からのクレームや説明等についてはすべて管理職が行うという組織的対応の仕組みをつくる。
(2)それにより、レジ担当者を商品会計のルーティンに専念させる。
(3)新型コロナウイルス特需の間、危険手当のような特別手当を加算して支給する。
(4)ただ現場に丸投げするのではなく、客の過大な要求を受けている従業員の心情を、上司がきちんと受け止める機会を設ける。

上記のような対策、仕組みづくりのほか張り紙(注意書き)も本来、有効な手段の一つです。しかし、今回の新型コロナウイルスのケースでは、残念なことに、ドラッグストアなどの店頭に目立つ張り紙をしているにも関わらず、騒動が繰り返されているのが現状です。

Q:今回のような想定外の事態に対する当面の対策とは別に、企業や経営者が日頃から行うべきカスタマー・ハラスメント対策は?
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残念ですが、カスタマー・ハラスメントを完全に無くすことは困難と考えています。

起こることを前提にして、企業のリスクマネジメントとして、
「①企業や経営者が組織的な対応体制を整備する」
「②個人レベルで、ハラスメントへの耐性を引き上げる対策を行う」
この2つの取り組みが不可欠と考えられます。

企業内で具体的に行うカスタマー・ハラスメント対策としては、

①現場でリスクコミュニケーション会議を行い、リスクを洗い出す。
②報告されたリスクに対して経営層がリスクマネジメント対策の方針を決定し、宣言する。
③方針を管理職に徹底する。
④現場に徹底する→再度①へ。

個人的にこれを「リスクマネジメントサークル」と呼んでいます。

ほかに、従業員が顧客や取引先から暴言やストーカーなどの迷惑行為を受けた場合に、弁護士やカウンセラーに相談する費用を補償する保険の利用なども、有効な対策手段の一つです。

Q:SNS時代、客が一方的に店員や店への不満・非難のほか、動画、個人情報をさらすなどのカスタマー・ハラスメントもあるようです。こうした行為への対処法は?
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SNS被害は深刻です。どの企業もその対処法には、頭を悩ませていていると思いますが、残念ながら万能策を提示することはできません。
ただしこれを放置することは企業の命とりにもなりかねませんので、何らかの対策は必要です。

その対策として、費用負担は発生しますが、ネットパトロールなど個別企業では難しい対応を行う風評対策専門会社の利用を検討することも、有効な選択肢の一つになります。

Q:今回紙製品を求めて行列をした人の中には、「デマとはわかっているが、実際、品薄になっているから」という人も。SNSのデマのほか、これを取り上げるメディアにも問題があるという声もありますが。
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確かに、メディア情報の影響を受けて極端な行動に走った人も多いでしょうし、それをメディアが助長しているという意見もあるかもしれませんが、カスタマー・ハラスメントについては、それらも含めて「前提」と捉えて、対策を考える必要があります。

長期的な視点で、学校教育をはじめとした「消費者教育」の徹底を図るという意見もあり、それも一考に価することだとは思いますが、緊急の課題は、あくまで、日々発生し続けるカスタマー・ハラスメントへの具体的な対策であると考えています。

室岡宏

「心のストレッチ研修」で人材を定着させる社会保険労務士

室岡宏さん(社会保険労務士事務所スローダウン)

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