12月12日は漢字の日 漢字にまつわる面白い話
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小学校の段階で漢字の得意・苦手が分かれる
「漢字離れ」が進んでいることを、以前JIJICOで「簡単な漢字が書けない。これってスマホが原因?」として指摘しました。それからまだ満2年も経過していませんが、「漢字離れ」そのものは、さらに進んでいると思われます。ただそうしたことは、私自身いくつかの場に書いていますから、今回は「漢字の効用、魅力」といった視点から、お話ししたいと思います。
効用・弊害という対比の面から子どもたちの成長過程を見てみると、小学生の段階で、まず漢字が「好き」な子と「苦手、きらい」な子に大別されます。5、6年生になって、「普通」と答える子は、あまりいないのです。
なぜそうなるかと言うと、4年生修了時点で640字の履修が済んでおり、5年生になってある程度以上できている子は、まずまず自信があるか、得意だと感じることになるのでしょう。逆にその時点で半分以上わからないと、「苦手、きらい、見るのもいや」という側に回るのだと思われます。
この意味で言うと、漢字学習において上記2つのパターンのどちらになるかの分かれ目は、3年生の段階であると言えます。640字の配当は、1年次から順に80、160、200となっていますから、3年生の200字をきちんとクリアするか、そこで逃げ腰になりネガティブに漢字と付き合うようになるかで、少なくとも漢字に対する将来のかかわり方が、はっきり分かれるとみていいでしょう。3年生で漢字が苦手らしく見受けられる場合には、早めにきちんと取り組む必要があると言えます。
漢字そのもののつくりや音の魅力
さて、では次に「漢字そのものの魅力」について考察しましょう。単体の漢字の面白さとして、どなたもよくご存じで、わかりやすいものとしては、会意文字、すなわち2つ(以上)の文字が組み合わさって別の意味となっている漢字があります。「田」んぼで「力」仕事をするのが「男」。「山」にある大きな「石」は「岩」。「木」が2つで「林」、3つあつまると「森」などですね。
この会意文字の中では、私はとくに「香」の字にひかれます。『角川漢和中辞典』(昭和61年12月218版)では、次のように成り立ちが説明されています。
<黍(きび)と甘とから成り、熟した穀物の味のよさをいう。カウ(コウ)の音はこうばしい意の語原(芳/ほう)からきている。黍(しょ)のこうばしいにおいの意。>
熟語の「芳香」は成り立ちそのもののようにこうばしい語感ですし、和食のお品書きの中の「香の物」も、目立たないながらピリリと鮮烈さを添えています。そして「か」という訓読みの音そのものにも、曰く言いがたい魅力を感じます。
読みの不思議な漢字の魅力
最後に「読みの不思議」ということを、お話ししたいと思います。京都府の丹後半島、京丹後市に、「間人」という地名があります。「間人」と書いて、「たいざ」と読みます。
なぜそう読むのかというと、聖徳太子が摂政になるすこし前の時代、太子の生母であった間人皇后(はしひとこうごう。穴穂部間人皇女=あなほべのはしひとのひめみこ)は、中央の争乱をのがれて、屯倉(みやけ)のあったこの間人に、しばらく住んでおられました。
色々なことがありましたが、いよいよ中央へ戻られる際、この土地の民に謝する思いから「間人」の字をお与えになったのです。しかしそのまま読むのでは畏れ多いとのことから、皇后がこの地を去られた、すなわち「退座(たいざ)」の意にもとづいて、「間人」にたいざの読みを当てたのだと言われています。
この「間人皇后」は、厩戸皇子=聖徳太子の母と擬せられる方ですから、皇后にまつわる「間人」の読み方も、現代のわれわれの考え方だけでは理解がむずかしい、「万葉仮名」のごときいわれのあったものだと考えて、その深みを味わってみると良いのではないでしょうか。
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