太る時間帯(22時〜午前2時)の食事は要注意!時間栄養学のススメ
太る原因は「何をどれだけ食べたか」ではなく「いつ食べたか」が問題
ダイエット関連の情報が目に入らない日はないくらい、テレビや雑誌、インターネットなどにはさまざまな情報があふれています。ダイエット特集を組めば雑誌が売れ、次から次へと出版されるダイエット本。そのいくつかはベストセラーに名を連ねています。実際、ウオーキングやジョギングを日課にしたり、ジムでトレーニングをしたり、太らないための努力をする人が増えています。にもかかわらず、日本だけでなく、肥満の人が世界で急増しているのはなぜでしょうか?
それは私たちが「飽食の時代」と呼ばれる、おいしいものにあふれた今を生きているからに他なりません。食の制限が効かないほど食べ物が豊富で、食によるコミュニケーションの機会も増えました。ついつい「食べ過ぎてしまう」というぜいたくな悩みを抱える人もいます。
肥満は病気ではありませんが、その満状態が続くと病気になる確率が高まるのは否定できません。肥満が原因のひとつとして考えられる疾患で、よく知られているのは「糖尿病」「高血圧」「高脂血症」です。また「脳卒中」「睡眠時無呼吸症候群」「膝や股関節の痛みや変形」など、肥満が体に及ぼす影響はさまざまです。命にかかわる病気になる恐れもあるため、肥満には十分に注意が必要です。
私も健康相談を行う際に、「肥満はあらゆる不調の原因になる」という話をしたり、相談者に日頃の食事内容を聞くなど、食生活について質問をしています。「何を食べているか(食事内容)」「どれくらい食べているか(食事量)」に関しては、みなさん非常に気にしているようです。でも「いつ食べているか?」といった時間的なことについては、ほとんどの人が気にしていないのが実情です。実は人間には理想の食事時間があり、その時間を守ることで「肥満を回避できる可能性がある」ということを、ぜひ知っていただきたいと思います。
「時間栄養学」により体のリズムと太る時間帯を知る
「何を」「どれだけ」食べるかが基本である栄養学に加えて、「いつ」「どのように」食べるかを考慮した「時間栄養学」と呼ばれる分野の研究が、近年注目を集めています。 人間の体には「体内時計」と呼ばれる24時間周期のリズムが備わっています。食事や睡眠などの行動にあわせて、消化・吸収といった内臓の働き、代謝の働きを体内時計が調整します。
では、不規則な生活を送るなど、体内時計を無視すると私たちの体はどうなるのかというと、活動と休息といった体のリズムが乱れ、体調不良を引き起こす可能性が出てきます。
時間栄養学においても、体の働きを調節してくれる体内時計はとても大切で、規則正しいリズムを保つためのポイントとして下記の2つが挙げられます。
まず「朝食が基本」であるということ。朝食をとることによって体内時計がリセットされます。朝食抜きで活動すると体や脳が栄養不足になり、記憶力や集中力が落ち、勉強や仕事の効率が下がってしまいます。さらに、朝食抜きが定着すると1.75倍太りやすくなるという調査結果もあります。起床から2時間以内に朝食をとることで、体内時計を正しいリズムに整え、健康的な体を維持することができます。
もうひとつのポイントは「夕食は少なめに」です。体内時計の働きの中に、夕方以降にとった栄養を脂肪として蓄えるメカニズムがあるからです。この仕組みにより、夕食の量が多い人は太りやすくなり、体内時計が夜型になる傾向があります。
夕食から翌日の朝食まで、約12時間の間隔をおくことが理想とされています。その間、空腹状態をキープすることで太りにくくなり、よりよい睡眠時間を確保できるという研究結果もあります。
上記のことをふまえてアドバイスをするならば「朝食を多めに、夕食を少なめに」といったイメージでしょうか。これを実践することで、太りやすかった人にも変化が表れるでしょう。「朝は小食」という人も多いかと思いますので急に変えるのではなく、徐々に朝食の量を増やし、そのぶん夕食を控えめに調整していくといいでしょう。
胃腸や肝臓、腎臓などの臓器の働きは、時間によって活動の度合いが異なります。同じ量の食事をとったとしても、食べる時間によって食べた物の消費に影響が生じるということです。普段の食事時間が太りやすい時間帯に重なっていないかどうか、見直してみましょう。
肥満遺伝子と呼ばれる「BMAL1」の分泌時間を考える
仕事や家事などが忙しく、日常的に食事時間が不規則な人が多いと思いますが、ダイエットを意識している場合は、特に夕食時間に注意をしてください。一般的に夕食は就寝3〜4時間前には済ませるとよいと言われています。
理由は、寝る前に食事をすると胃腸が消化活動のために活発に動き、寝付きが悪くなったり、胃の中に食べ物が停滞して朝の欠食につながったり、体内時計の働きが乱れてしまうからです。そのため、連日、夕食を食べるのが遅くなると「調子が出ない。なんとなく体がだるい」といった不調につながるので注意しましょう。
では、食事時間を考える上でとても重要なホルモン「BMAL1(ビーマルワン)」を、みなさんはご存じでしょうか?
BMAL1とは体内リズムを正常に機能させるための遺伝子の一種で、体内に脂肪を蓄積する働きがあり、別名「肥満遺伝子」とも呼ばれています。BMAL1の量は時間帯により増減します。最も量が多くなるのは22時頃から。さらに深夜にかけて増加し、午前2時〜4時頃にピークを迎えます。その後は朝に向けて徐々に減少し、お昼を過ぎた14時頃が最も少ない時間帯になります。
「夜中に食べると太る」という話も、この遺伝子の働きを知ると納得できますね。
「食べる量を減らしても長続きせず、結局リバウンドしてしまった…」という経験を持つ人は少なくないと思いますが、太りにくい体づくりに重要なのは、食べる量ではなくBMAL1の量を考えることにあったのです。BMAL1の少ない時間帯に食事をとることで脂肪はつきにくくなります。つまり、食べる量を減らさず「食べても太りにくい体づくり」を目指すことができます。継続すれば、理想的なボディーラインを手に入れることもできるでしょう。
起きてから2時間以内にしっかりと朝食をとることでエンジンが蓄えられ、エネルギー代謝が上がります。 BMAL1が少なくなったお昼は好きなものを食べてOKです。太りやすいとされる脂質の多い食べ物は、この時間にとるといいでしょう。
おやつタイムも14時〜15時頃に設定すれば、同じくBMAL1が少ない時間に当たります。なおかつ昼食の2~3時間後は血糖値も下がっているので、「太るから」と控えていたケーキやお菓子をがまんしなくていいのが、このタイミングです。ただし、なるべく時間をかけずに5分程度で済ませるのがポイントです。
食事の基本時間を「朝食は7〜8時」「昼食は12〜13時」「夕食は18時〜19時」とするなど、BMAL1を意識した規則正しい食生活に切り替えることをおすすめします。
なお、21時頃までに夕食がとれない場合は、19時頃までに脂肪になりやすい炭水化物(おにぎりやパンなど)を軽くとり、帰宅後に消化の良い軽めの食事を補うといった分食をするのもいいでしょう。
夜勤など不規則な生活でも「時間栄養学」「BMAL1」を意識することが大切
夜の食事時間はBMAL1の量を考えることが大切です。「夜勤明けの午前4時なら、早めの朝食だから大丈夫」と思っていたら、それは間違いです。BMAL1の量が多いこの時間帯にガッツリと食事をすると、脂肪となって体に蓄積されやすくなります。
3食をとる時間帯が不規則な人は、食べる時間がないなどの理由で欠食になったり、前の食事から時間があいたことでおなかがすいて大食いになったり。食事内容が偏り、野菜不足や脂肪過多、糖質過多になる可能性もあります。食事の時間が不規則になることで、肥満だけでなく、適度な体重を維持できなくなることもあるのです。
「仕事の都合で規則的に食事をとることは無理」と最初からあきらめている人も多いかも知れません。でも時間栄養学やBMAL1を知ることで、太りにくい食事にすることはできます。深夜勤務や交代制の仕事の場合、生活リズムは崩れやすくなりますが、食事時間の工夫をして、血糖値を上げにくい食事内容に変えてみましょう。
BMAL1は太陽光を浴びることで減少するとも言われているので、朝の日差しを浴びて体内時計をリセットするのも大事です。勤務時間中も意識的に体を動かすなどして、自律神経を安定させるようにしましょう。
食べる量を減らすのではなく太る時間を意識した食生活を
世の中にあふれる情報。中でもダイエットは大きな市場です。サプリメントや食品など「楽をして簡単に…」という甘い言葉で次々と消費者を誘惑してきます。〇〇がダイエットに良い」「〇〇を食べるとやせる」などのワードは確かに魅力的かも知れませんが、間違ったダイエットは禁物です。漢方薬などを含め「飲むだけ」「食べるだけ」で、脂肪が消えて無くなることは科学的に考えてもありえないことです。
やせるために食べる量を減らし、反動でドカ食いしてしまうといった生活は、体に負担をかけてしまいます。食べる量より食べる時間を変えるだけで、代謝を上げて脂肪をため込みにくい体を目指すことはできます。もっと人間の体の仕組みを理解し、合理的で健康的な方法を考えるべき時ではないかと思います。まずは自分の食生活と向き合ってみましょう。
「何を」「どんな風に」「どれぐらい」食べているか。そして最も大切なのが「いつ」食べているかという、これまでの暮らしを振り返る作業です。太りやすい時間帯と太りにくい時間帯をしっかり頭に入れて健康的な食生活を目指しましょう。
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