「運動のし過ぎ」はどこから?適度な運動と過度な運動の境界線
さまざまな条件が重なり合って個人の適切な運動量が決まる
スポーツ指導において結果を求め過ぎた結果、負荷の高いトレーニングを過剰に行うことがあるようです。また、日本人はマラソン好きで努力家が多いため、目標達成のためにトレーニングをし過ぎている人が多いのも事実です。では、一般的にどこからが運動のし過ぎになるのでしょうか。実は、その境界線が曖昧ではっきりしておらず、とても難しい問題なのです。
運動の質や量を考える際、年齢が若ければ疲労回復は早いものの、成長期ということを考えれば体作りのことも考慮する必要があります。さらに、日常の運動量の違いも考えなければならず、身体能力の差においても大きな開きが生じてきます。そもそも、運動の目標が全国大会で活躍するような高いレベルの場合もあれば、健康維持やダイエット目的の場合もあるでしょう。
持病を抱えている人もいれば、過去の怪我が完全に治らず不安を抱えながら競技を行っていることもあり得ます。さまざまな条件が重なり合って個人の適切な運動量、トレーニング内容が決まってくるのです。
境界線は個人差によるところが大きい
では、高い目標に向けてトレーニングをしている競技者に的を絞って話をします。2000年のシドニーオリンピックで、高橋尚子選手が金メダルを獲得しました。小出義雄監督は講演で3000mの高地でトレーニングを行った際、「普通のトレーニングをしていたら、世界のトップには立てない」と語っていました。
これは、オリンピックの優勝という高い目標と、高橋選手の強靭な肉体と精神力があったために可能なトレーニングであり、一般人はおろか普通の競技者にとっても過度なトレーニングとなります。運動のし過ぎによるオーバートレーニング症候群は、高い目標を掲げる競技者にとっては誰でも陥りやすいものの、境界線は個人差によるところが大きいということです。
指導者とのコミュニケーションが過度な防ぐ一番の有効な手段
オーバートレーニングに陥らないためには、日ごろから日誌などでセルフチェックを行い、指導者と情報を共有することが重要です。オーバートレーニングの症状として、記録の低迷・起床時心拍数の上昇・運動後心拍数の回復遅延・体重減少・睡眠障害などがありますが、これは数値としてわかりやすいもので、記録しておけば指導者に伝わりやすい項目です。
また、オーバートレーニングの場合は全身の倦怠感が抜けなくなり、精神的にも不安定になるため、日々の疲労度や精神状態を数値化して残しておくことも大切です。しかし、食欲の低下や筋肉痛が取れにくいという数値化しにくいことも判断材料になるため、指導者とのコミュニケーションが運動のし過ぎを防ぐ一番の有効な手段です。
私も高い目標を持って選手を指導しているため、常に「やり過ぎない」ことに注意しながらトレーニングメニューを組み立てています。最近は選手のコンディションを把握するためにスマートフォンのアプリを使用して情報を共有していますが、個々の選手の適切な運動の質と量を考えるためにとても役立っています。指導者のいない市民ランナーもセルフチェックをしながら、自分の変化に気が付くことでオーバートレーニングを防げるのではないでしょうか。日々のセルフチェックで変化に気付き、自分なりの境界線を常に意識していきましょう。
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